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再撮
#4
しおりを挟む子どもの頃の夢を赤裸々に伝えることはとても恥ずかしい。
だから、教師やクラスメイトに知られてしまう授業の時間が大嫌いだったのかもしれない。笑われることを考えたら、本当の夢は心の底に埋めてしまいたくなる。
照れながら話す秋を横目に、矢代は沈黙を守っていた。否定も肯定もせず、褒めることも貶すこともせず。やがて静かに瞼を伏せる。
「そういえば俺も……子どもの頃、教師以外に夢があったな」
「え、マジで? 何?」
「内緒」
「なっ……ズルいよ、俺は話したのに!」
憤慨する秋を宥め、矢代は堪えきれない様子で笑った。
「わるいわるい。でも人に話すと色褪せる夢もあるだろ」
「あぁ、先生の夢わかった。独裁者でしょ」
「ふむ……秋、今度試しに模擬授業の特訓をしようか。……朝まで」
「すいません、冗談です」
秋は溢れ出る笑いを堪えて、矢代の首筋に吸い付いた。
わざと音を立てて強く吸う。最初は興奮の材料になると思ったが、だんだん色気とは関係ない気がしてきた。どちらかというと自分が今しているのは、幼児が親に甘えるような仕草だ。
「……なんだ、もう終わりか?」
「ま、まさか。これからもっとイイことしてあげるよ」
秋はソファから下りて床に膝をつく。屈んで矢代のジッパーを下ろし、中から彼のモノを取り出した。まだ柔らかいそれを手で包み、上下に扱く。
「ふ……」
矢代はわずかに笑う。特に何も言ってこないあたり、この行為に悦んでいるんだろう。
……こんな時でも余裕そう。
秋は首を傾げた。
彼も今は怪我人なんだから、もう少し弱った姿を見せてもいい気がする。こんな時ぐらい、もっと頼って……甘えてくれればいいのに。
やっぱり、彼にとって自分はまだ子どもなのか。
「秋……っ」
ようやく硬さを得た彼の性器。秋は何の迷いもなくむしゃぶりついた。
今までに何回フェラしたかなんて覚えてない。ただ思うままに、したいと思った時にした。
彼はバリタチで、自分のことより俺をイかす方を優先する。俺が気持ちよくなってる姿を見て満足する。でも、たまには彼にも気持ちよくなってほしい。俺にだけは弱いところも明かしてほしい。
一心不乱にキスした。こんなところを知り合いに見られたら発狂間違いなしだけど、皆きっと隠してる。性に関しては誰もが隠し持ってる一面かもしれない。
大人しそうな子ほど、セックスになると肉食系に豹変したり。その場にいたら驚くんだろうけど、まぁあるあるだ。さして珍しくもない。
俺もこの人を前にすると、羞恥心なんて単語は忘れてしまう。
「先生の……すごい硬くなってきた」
「そりゃ、そんな美味そうにしゃぶられたらなぁ」
「ん、美味いよ。もうずっとしゃぶってたい。俺だけのものにしたい」
亀頭を重点的に舐め上げ、指で擦る。こんな太くて長いものが自分の中に埋め込まれるのかと思うとゾクゾクする。
でも、今日は何も準備をしてないから。
「今日は俺の口でイッて」
また激しくフェラを開始する。これ以上なく強く吸うと、口腔内が熱い液体で満たされた。
「う、ん……っ」
白い蜜が顎まで滴る。矢代は達したようだ。
秋は満足そうに、汚れた口元を舌で舐めとる。
「美味しい……」
「嘘つけ」
「もう、ムードは大事だろ? せっかく盛り上げてやろうとしてんのに」
秋は不満げに頬を膨らます。反対に矢代はすっきりした顔で近くのティッシュを取った。
「そういう気遣いはけっこう。俺は演技には興味ないんだ。それより早く拭け」
「ん……っ」
秋の汚れた口元を、矢代はティッシュで丁寧に拭き取っていく。
「先生、頭の包帯もあるし……今日は身体だけ洗う?」
「そうだな。たった今お前に汚されたし」
「何だよその言い方! 俺は負担かけないように……」
憤り言い返した時、衝撃を受けて床に倒れた。秋が見上げた先には、馬乗りになった矢代がこちらを見下ろしている。
「だから、気遣いはいらないって言ったろ? お前に心配されるほど、俺はまだ耄碌してないよ」
矢代は手馴れた仕草で秋のズボンを下ろした。無論、下着ごと。
露になった彼の性器は、だんだんと大きくなっていく。
「せっかくだからお返し。秋、手で扱くのとフェラと、どっちがいい?」
そんなこと訊かなくていい。無性に腹が立ったけど、口から出たのは非常に情けない言葉だった。
「な……舐めて、ほしい」
顔を手で隠しながら答えると、彼は何も言わずにそこを舐めた。
途端、強烈な快感が全身を駆け巡る。
「ん、あっ……気持ちいい、先生……っ」
「こういう時だけは素直だな。いつもそうなら良いんだが」
矢代は喉を鳴らし、秋の性器を微妙な力加減で吸う。
「ほら、イッていいぞ」
「あぁっ!」
最後に強くキスしたとき、先端から白い飛沫が放たれた。赤く腫れた性器から垂れ落ちる蜜を、矢代はまた丁寧に舐めとっていく。
「良過ぎてつらいか? 腰までビクビクしてる」
「あっ……ぅ」
秋は虚ろな瞳で矢代を見上げる。身体はもうとっくに快感の手下。彼のものだ。
彼に触ってもらえなければ、きっと死んでしまう。そう思うほどに育てられていた。
「先生の、欲しい……」
「でも、準備してないだろ?」
「うん。無理だけど……言ってみただけ」
笑うと彼もかすかに笑ってキスしてきた。
このまま、二人で融けてしまいたい。
そんなことを本気で願っている自分が怖い。
疲労と快感が混ざり合った後、秋は矢代の胸の中に倒れ込んだ。
やっぱり融けなくてもいいから、このまま寝たい。現実の夢もいいけど、優しい夢の中が好きだから。
「先生。おやすみ……」
「ははっ、結局寝るんだな」
恋人の苦笑が聞こえたけど、かまわずに瞼を閉じる。体は暖かった。
優しく抱き寄せてくれている。それはきっと、自分が目覚めるまで。
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