シャッターを切るときは

明察

１２

車に乗りこみ、互いの手が軽く触れる。
そして自然に繋いだ。今じゃ当たり前のこの仕草も、一年前だったら大騒ぎしてただろう。
「先生。来年、俺が高校卒業したら」
静かすぎる夜に、秋は不意打ちな提案をした。

「一緒に住まない？」

そして、とても重大な決断。
矢代は目を見開く。
しかし、答えるのに時間はかからなかった。
もうずっと前から、そんな想像を何度もしていた。いつかはそうしたいと胸に秘めていた。打ち明けたい、しかし抑えなくてはならない想い。……まさか彼の方から告げられるとは思わなかった。

「あぁ。その時は、迎えに行くよ」

少しだけ、握る手に力が入る。
先のことばかりだ。
気持ちだけ前に走って未来が待ち遠しい。

「うん。待ってる」

彼に会いに行くその時には、心から自分を誇れるように。彼を、守ることができるように。
矢代は密かに胸に誓う。

「……愛してるよ、秋。お前は俺の自慢の恋人だ」

それを聞いた秋も、嬉しそうに頷く。
矢代は腰を浮かせ、彼の小さな口を優しく塞いだ。