141 / 171
明察
1
しおりを挟む先生……。
もしかして心配してくれてるんだろうか。それだと尚さら心苦しくて、俯いた。今の自分はとても、彼と目を合わせられる勇気がない。
「え、ええ。そうですね。本当にごめん、風間君。……決して冗談ってわけでもなかったんだけど」
「はっ!? おい維、それはどういう意味だよ!?」
謝罪のはずが、再び維と藤間の仲が危なくなる。矢代は察したのか、直球な質問を二人に投げ掛けた。
「藤間、その女装趣味の子が、問題あるって言ってた恋人なんだな?」
説明されるとかなり破壊力があって、藤間は黙って頷くことしかできなかった。それに対し、維は眉根を寄せる。
「あの、ちょっといいですか? 趣味じゃなくて、私は心が女の子なんです。だから男の子が好き。風間君は個人的にお気に入りだったから」
「だったから、じゃない! 俺の気持ちも考えてくれよ!」
藤間の悲痛な叫びに、維は困り顔で両手を合わせた。
「ごめんね。浮気とか、そんなの全然考えになかったよ。私にとって風間君は可愛い弟みたいな存在で、広夢が一番だから」
「藤間、これは女装以前に色々問題あるんじゃないか?」
可愛らしい仕草で説明する維に、矢代は至極冷静に切り捨てる。しかし新たな火花が散るのは明らかだった。
「一々言うことがきついですね。教師ってそんなに偉いんですか? 人柄を貶す権利まであるとは思えませんけど!」
「別に偉くないし、君の人柄は何だっていい。俺が怒ってるのは、君が秋にしようとしたことだ」
「ま、まぁまぁ落ち着いて! でも起きれて良かったよ、風間君。具合はどう?」
蚊帳の外だったのに、急に藤間に話し掛けられて秋は戸惑った。
「あ、心配かけてすいません。……もう大丈夫です」
藤間の顔は見ることができても、矢代の顔は見られなかった。
「全っ然大丈夫じゃないよ。風間君、すごい具合悪そうだったんですから」
「って言ってるけど、君さっき手加減なく平手打ちしてたろ」
「いっいやあれは、申し訳ないけど……ていうか本当にいつから見てたんですか!?」
二人が口論する度に「まぁまぁ」と仲裁に入る藤間が少し憐れな気がしたが、今はとても会話に参加する元気がない。
蚊帳の外の存在でいる方が助かる。けどそういう訳にもいかなそうだ。
「とにかく風間君は、今日はもう帰ろう。親に連絡して迎えに来てもらった方がいい」
「だ、大丈夫です。仕事だろうし、……もう子どもじゃないから」
途端に胸が痛み出して、秋はシーツを強く握り締めた。
0
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる