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推察
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しおりを挟む午後の授業終了を知らせるチャイムが校内に鳴り響いた。
保健室に近づく、二人分の足音をかき消すように。
それに秋と維は気付かず、話を続けた。秋は拳を強く握りしめる。
「俺は……」
他人ならともかく、自分に嘘ってのはよく分からない。しかし彼女は強く主張する。
「君はもっと、自分に自信を持った方が良いよ。人の意見に左右されたり、従うんじゃなくて」
「……」
人に従う。それは確かに身に覚えがあった。
以前……辻村の『お願い』を聴いてたときの事を思い出す。嫌われたくない一心でやってしまった、許されないことだ。それは矢代にも隠している。
「このままじゃ君……いつか自分のことも嫌いになっちゃうよ」
「……」
確かにその通りだ。でも、言われなくても分かってる。
とっくのとうに大嫌いだからだ。……こんな自分。
「私は君の、そんなグラグラした所も好きなんだけど……でもやっぱり、自分の為には良くないよ。しっかり意志を持って、嫌なことがあったら相手に伝える。すぐには理解できないかもしれないけど」
「理解しました」
「してないでしょ。その即答さは」
「……」
維の顔つきはさらに険しくなった。
でもやっぱり、衝突するぐらいなら自分の気持ちは隠しといた方が良い。そこまでして自分の意見を貫くのも疲れるし、争うのもごめんだ。
もう嫌なんだ。
「……風間君」
傷つくのも、傷つけられるのも。
相手の好きにさせればいい。それなら迷惑なんてかけないだろ。
「自分の気持ちを押し殺してたら、いつか許容量を超えて爆発しちゃうよ。……そうならないように周りに相談したり、打ち明けたりするんだよ。君はそういうこと、ちゃんとしてる?」
「それは……」
答えるのに逡巡してしまう。ってことは、やっぱりしてないってことなんだろうか。
「でも……そもそも俺、相談できる様な友達いないんで」
「馬鹿っ!」
殴られた。
「私が居るでしょ!?」
維は秋の手を取り、目の前に屈んだ。
「私は風間君のこと、大事な友達だと想ってるよ。それにあの子……君がよく一緒に居る小塚君だって友達でしょ?」
「それは……友達、ですけど。だからこそ、余計なこと言って悩ませたくないんです」
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