シャッターを切るときは

七賀ごふん

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推察

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────さっきまでは寂しくなかったのに。

あの冷たい感覚が。独りの感覚が戻ってきた……ような。

薄暗い意識の底で、不透明な想いを巡らせる。

「かっ……風間君!!」
「ぎやっ!?」

ところが、腹部にのしかかる強烈な衝撃に秋は飛び起きた。真っ暗だった視界が移り変わり、明瞭な景色が広がる。
「いって……あ、維さん」
腹をさすりながら、上体を支える。現状が理解できないまま何度か瞬きして見ると、長い黒髪の女性が覆い被さるように目の前に居た。
「風間君、起きた!? いや、私が起こしちゃったのか……ごめん!」
「あ……え、と」
心配そうにこちらを見つめる彼女に、ますます戸惑う。

「ここって……保健室ですか?」
「うん、そうだよ」

やはり。見覚えのある内装だ。何より、こんなにベッドが並ぶ場所は学校に一つしかない。
壁にかかった時計を見ると、既に午後の授業は始まっている時間だった。

訳が分からなくなる。授業は……あれ、俺何でここに居んだっけ……。
頭が痛い。呆然と目の前だけ見ていると、維は秋の近くの椅子に腰を下ろした。

「私はさっき仕事が終わってね。帰ろうとしたんだけど、風間君が保健室で寝てるって彼から聞いて飛んできたんだよ」
「え、彼って?」

不思議に思って聞き返すと、彼女は慌てて手を振った。
「あ、友達。知らないかな? 英語の藤間先生」
「知ってますよ。へぇ、維さんて藤間先生とも友達なんだ」
取り留めもない話に少しだけホッとした。でも、すぐに現実に戻る。
「俺……確か……」
気を失う前の記憶を辿ろうとした。瞬間、フラッシュバックしたのはトイレでの出来事だった。
押え付けられて、強引に身体を乱暴されたこと。
服を脱がされて、脚を開かされて……したのは、

「うっ……!!」

途端に猛烈な吐気が込み上げてきて、秋は口元をおさえた。
「ちょっ、大丈夫!?」
維は急いで近くの受け皿を取って差し出した。
「さっきすれ違いで保健室の先生行っちゃったんだ……待ってて、ちょっと呼んでくるよ」
「待って、維さん……大丈夫だから」
秋は口元を拭って、深呼吸する。消え入りそうな声で呟きながら、維を見た。

「すみません。少しだけここに居てもらえませんか。俺ちょっと、今一人になりたくなくて」
「もちろん構わないけど……本当に大丈夫? 辛かったら無理しないですぐに言ってね」
「ありがとうございます。……あの、あと誰が俺を見つけたのか……知ってますか?」




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