シャッターを切るときは

七賀ごふん

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推察

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まだ日中だというのに、気が滅入るほど暗い。
昼休みになったが、今いる保健室は日当たりの悪い位置にある為、電気を点けないと夜のように暗かった。
小さく溜息を零して、矢代はベッド近くの椅子に腰掛ける。

目の前のベッドでは、秋が静かに眠り続けていた。本当は家に帰してやりたいが目を覚まさないことにはどうしようもない。その上、こんな状態の彼を一人残してはおけなかった。

「ごめんな……」

彼の頬をそっと撫でて呟く。届くわけがないから言葉にしたところで意味はないし、今さら取り返しがつくわけでもない。それでも、言わずはいられなかった。

「矢代、ここに居たのか」
「藤間」

保健室に入って来た藤間は、秋の姿を見て一瞬口を閉ざしたが、すぐに矢代の傍へ詰め寄る。
「……どうした。何があった」
「色々……」
「色々って何だよ? 只事じゃないだろ、これ。先生には診てもらったのか?」
藤間は声を潜めながら秋の顔を覗く。仕切りのカーテンをそっと閉め、腕を組んだ。
「軽い手当てはしてもらった。後は……」
「後は?」
不思議に思った藤間が聞き返すと、矢代は困った様にため息をついた。
「メンタルの方かな」
「……保護者には連絡したか?」
「したけど繋がらなかった」
依然として難しい表情を浮かべるだけの矢代に、藤間は眉を顰める。矢代は視線を秋に向けたまま呟いた。
「こうなったのは、全部俺のせいなんだ。本当は、こうして傍にいる資格もない」
「……」
張り詰めた空気の中、藤間は首を横に振る。事情は分からないが、ここままここに留まるわけにはいかなかった。
「まずい事情がありそうだけど、他の先生を呼んで一旦戻ろう。まだ午後の授業がある」
「あぁ……」
促されて矢代は席を立ったが、もう一度心配そうに秋を振り返った。

「あ、あともうひとり彼を看ておく奴を呼んどくから。心配すんなよ」
「そうか。悪いな」
「このままじゃ可哀想過ぎるからな」

藤間は鋭い視線を矢代に向け、一言付け加えた。

「本当にな」

それに対し矢代も苦笑する。藤間が出て行ってから、独り胸の内を零した。
「この子を、ずっと苦しめてばっかだ」
俯いて、保健室の扉を閉めた。

秋は自分の罪を直視して、いつも後悔していた。
それすら見て見ぬふりをして、自分の罪から目を逸らし続けていた……自分は、彼にどう償えば良いんだろうか。




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