シャッターを切るときは

七賀ごふん

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活殺

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暗く湿った空間で行われる、異常な行為。地獄の時間。
何かが終わる音がする。

「ん? 初めて……じゃないって?」
「もう他の奴とヤってたってこと?」

少年達は不思議そうに顔を見合わせる。ただ一人、辻村だけは……穏やかじゃない心中で強く歯軋りした。
「初めてでこんな緩むわけないよな。……なぁ秋、誰とヤってたんだよ。一回や二回じゃないだろ」
「ぅ……」
秋は顎を掴まれ、無理やり顔を上げさせられる。しかし辻村の質問には答えられなかった。もうマトモに考えるだけの意識は保っていなかった。
「ははは……風間、すでに寝取られてたのか。辻村、残念だったな」
そう誰かが言った瞬間、壁を伝った衝撃音が周りに響いた。反射的に全員黙り込む。秋のギリギリ横の壁を殴ったのは、やはり辻村だった。

「変だなぁ。お前、俺のこと大好きだったじゃん」

辻村の声は明るかったが、身に纏う雰囲気は先程とまるで違う。殺伐とした空気に満ちている。それでも秋は虚ろな眼をしたまま反応を示さなかった。 
「おい、秋と関係ありそうな奴って誰だ?」
「ええと。一番つるんでんのは同じクラスの小塚って奴。……あ、あと生徒じゃないけど……矢代とよく一緒にいるよ」
「へぇ」

……!

“彼”の名前を出されて、秋はわずかに理性を取り戻した。本当は終わるまでボーッとしていたかったが、そこまで頭は馬鹿になってくれないらしい。

「矢代先生か。ないと思うけど、どうなの? 秋」
「……」
「はぁ、もう限界か」

辻村は大袈裟にため息をつくと、乱暴に秋の中から自身のモノを抜いた。

ようやく地獄から解放された。だけど心は、さっきよりもボロボロに壊された気がする。
「あーあ、秋の初めてが欲しかったのにガッカリだよ。萎えたからもう終わり」
「おい、ここに放置しといて大丈夫なのかよ」
「あぁ……。どうせここには誰も来ないって」
辻村の言葉に戸惑いながらも、残りの四人はそそくさと出て行った。
「おっと、そうだ」
しかし辻村は思い出したように踵を返し、座り込む秋の前に立ち止まった。

「一応記念撮影しとかないとね。懐かしいな、……昔はよくこれで遊んだよね、秋」

とにかく、前が暗い。
最後に聞いたのは彼の楽しそうな声と……シャッターを切る音だった。



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