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活殺
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しおりを挟む苅谷の表情は、秋の眼には悲しそうに映った。お互い無言になったとき、授業を知らせるチャイムが鳴った。
「とりあえず話が聞けて良かったよ、風間君。大変だと思うけど、俺は君の味方だから何かあったら言って。……あ、時間なかったら小塚を通してでもいいし」
「ありがとうございます。それはでも、苅谷さんの方も……」
そう言うと、彼は少し微笑んで去って行った。
独りになり、また不安になる。足元が覚束無い。
本当にこれで良かったのか?
会長は確かに他の男子に手を出していたけど、苅谷さんのことは……本当に好きなように見えた。
俺だけ被害者ぶるのは、絶対違う。
あのタイミングで苅谷さんが生徒会室に来なければ、また別の未来になっていたんだろうか。
いつも矢代とやるようなことを、自分は……会長と……。
ちょっと想像して、酷い自己嫌悪に駆られた。矢代以外とセックスなんてできない。
他人にあんな恥ずかしい格好を晒すなんて……今まで付き合った誰とも、できそうになかった。
「……っ」
一度イメージした映像はなかなか頭から消えてくれない。下腹部が妙に熱くなってることに気付いた。
嘘だろ……。
触れなくてもわかったが、そこは反応していた。妄想だけで勃つとか……もう末期の変態かもしれない。冗談抜きで何とかしないと。
少し落ち着きたくて、壁に手をついて休んでいた。するとちょうど、目の前に人影が現れる。
「よお、風間。久しぶり」
「え……」
そこに居たのは四人の生徒だった。
同じ二年生で、嫌なくらい見知った顔ばかりだ。
「なんだよ……何か用?」
こんな時に……頼むからどっか行ってくれ。
秋は心の中でそう念じたが、彼らは見逃してはくれなかった。強引に腕を引っ張って、何故か教室とは違う方へ向かおうとする。
「相変わらず機嫌悪いな。いいからちょっと来いよ。授業サボるぐらいいいだろ?」
「はっ? おい、ちょっと待てよ!」
突然の強制連行に焦った。
今は身体が熱くて、彼らに逆らって逃げることはできそうにない。
最悪だ……!
抵抗できない以上、大人しく従うことにした。彼らに連れて行かれたのは、普段は閉鎖されたトイレ。
そこは初めて来た場所だったが、暗くじめっとした空気に包まれてて、同じ校内とは思えない雰囲気だった。
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