シャッターを切るときは

七賀ごふん

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査察⑴

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雨が降りそうな曇り空。
四月の外はまだ肌寒い。二人だけの屋上は尚さら寒く感じた。

「とりあえず、それは没収する。貸しなさい」

風間が買おうとしていたDVDが数枚、足元に落ちていた。
「あ……っ」
拾い上げると彼は少しだけ気まずそうに、視線を外す。よっぽどヤバい嗜好のものなのかと思ったら、案の定そうだった。監禁とか集団レイプとか、目を覆いたくなる感じが多い。そんなのアリか?って感じのシチュエーションを売りにしてる。

「すごいな。見応えありそうなもんばっか」
 
……じゃなくて、最近の高校生はマニアックなものに手を出し過ぎだろ。これぐらいハードじゃなきゃ満足できないのか?
若干呆れながら見ていく中に一枚だけ……異様なジャンルがあった。
“男同士”のソレをハメ撮りしたAVが。

「お前、こんなんもん喜んで見てんのか……?」

やや引き気味に問い掛けると、風間は顔を赤くして強く否定した。
「違います。“そっち”は買うの初めてだし!」
怒ってるが、それは逆ギレに近いと思う。

「じゃあ、興味でも湧いたとか?」

……あの日の出来事が頭に浮かんだ。
同じ学校の男を盗撮していた彼の奇行が。
「興味っていうか、まぁ、そんな感じですけど……」
「……ふうん」
この少年の真意も目的も分からない。
あんな昔のことを問い詰めたところで、シラを切るに決まってる。それならいっそ────。

「…………こんなもん買わなくたって、この学校なら本物を見れると思わないか?」

ケースを彼の胸に当て、問い掛けた。
あの時の問題児はどっちだったか。

多分、両方だ。

あんな条件を出した時点で、自分も……教師というより、人間として失格だった。

あんな馬鹿な提案を実行しようとした理由は……風間のことを知る為。そして少しでも今年が長く感じるように、と思ってのことだった。
だから『今年中』に期限を決めて、カップルの盗撮なんて無茶な要求をした。

この不思議な少年に興味を抱いていたのは事実。でもこの頃は、ここまで夢中になるなんて思いもしなかったんだ。




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