上 下
98 / 179
考察⑵

しおりを挟む



射抜かれるような熱い視線。
自分はもう、この目に犯されてるんだと気付いた。

ずっとずっと、彼に抱かれているのだと。


 ───耽溺。


「んっ……」
時間感覚のない部屋で、淫らな水音が鼓膜を揺さぶった。
「ふっ、う……うぅ……っ」

やっぱり、結局こうなる。
誰にも邪魔されない空間に二人でいたら、ここに辿り着くのは必然だった。
秋は矢代に背を預けながら、後ろを向いてキスをした。こんなに深いキスをするのはいつぶりだったか。久しぶりなのに、頭や指先まで痺れそうなほど感じていた。

矢代はキスを続けながら、秋のベルトに手をかけた。
「んっ……あ、待って……っ」
唇が離れ、秋はぬれた口元を拭いた。
「何?」
矢代は不思議そうに、秋のネクタイを解いて襟元を緩めた。
「やっ、駄目だ、まだ……っ」
抵抗しようにも、腰にしっかり手を回されていては逃げられない。しかし彼の手は着々と次の段階へ移行しようとしている。

「ふふ。久しぶりだから緊張してんのか」

脚の間に手を差し込まれて、思わず身体がビクッと震える。
何度したって怖い。そんなの当たり前だ。
 
「間隔空きすぎると緊張しちゃうか。まぁゆっくり思い出させてやるから……心配すんな」

彼はその綺麗な唇で笑うと、今度は首周りも愛撫してきた。最近気付いたけど、砕けた言葉遣いが増えてきた気がする。

「っと……さすがにここじゃ駄目だな。ベッド行くぞ」
「え」

驚く秋を抱き抱え、矢代は寝室へ向かった。
「制服は汚すとマズいからな」
あっという間に衣服を脱がされ、息つく間もなくベッドに押し倒される。
パソコン室の時以来だ。一糸まとわぬ姿で矢代を見上げる。

すると矢代も黒シャツを脱ぎ、上半身が裸のまま覆い被さってきた。思ったより逞しい胸板が視界に入る。汗をかいていたのか、ちょっとだけ男らしい香りがする。
わかってるはずなのに、大人の男なんだ、と再認識した。
おまけに酔ってるせいで顔が赤い。酒の香りと、ベッドサイドのフレグランスが反発してる。
 
「熱……」

矢代は顔にかかった前髪を掻き分けて、秋の唇を奪った。舌を絡ませすぎて、離れた後も糸を引いている。
知らない人みたい。
「っ……んっ、ん……!」
部屋の温度が急上昇したみたいだ。
このベッドからは矢代の香りがほのかにする。彼に全身を包まれてるようで、緊張は解けてきていた。
緊張より今はむしろ、興奮している。もっと触れてほしい。乱暴でもいいから。
「あっ!」
長い包容を終えると、矢代は秋の後ろへ手を伸ばした。腰の奥まった部分。
そこを指の腹で優しく撫でる。秋は何とも言えない感覚に陥った。一度は自分も手を伸ばしたが、やはり他人に触られるとまるで違う。

「慣らさないとな。……ちょっとだけ我慢しろよ」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

処理中です...