97 / 179
考察⑵
8
しおりを挟む「俺……次会ったとき、会長に殺されるかも。苅谷さんの件があるから、ガチめに後ろから刺される可能性ある」
あらかた今日あった出来事を話し終えて、秋は冷めた紅茶を飲んだ。
「しっかし、須佐は……学校にゲイを捜してる奴がいるなんて噂を誰から聴いたんだろうな?」
それまで閉口していた矢代が不思議そうに腕を組む。
「さぁ、そこまでは。でも砂川がゲイ仲間に何か話した可能性もある。売店のお姉さんに、ゲイを捜してることは言っちゃったからさ……」
「そうだったな。でも目的は知られてないんだろ? それならまだ最悪じゃない。いくらでも否定できる」
矢代は席を立ち、秋の紅茶をいれなおした。
「心配すんな。噂はともかく、須佐はしばらく大人しくなるよ」
「え、どうして?」
「何となく」
何だ、その根拠のないセリフは。腑に落ちなくて頬を膨らました。
「それより、須佐が言っていた……お前の情報を売った“元彼”な。そっちも注意しておけ。目星がついてるなら今すぐ話せ」
矢代は険しい顔で秋を見据える。
「……」
それは自分にとってもダメージのある出来事だった。俯き、少しの沈黙の後首を横に振る。
「わかんない」
頭の中がぐちゃぐちゃになる。絡みきった糸をほぐそうにも手が滑って、やる気すら出ない。
いっそ全部捨ててしまえたら楽なのに。
「……ごめん。ちょっとトイレ」
矢代の横をすり抜け、秋は手洗いへと向かった。
不安で押し潰されそうだ。誰かに縋りつきたい。
でも駄目だった。
全ては自業自得。自分の為に盗撮を続けた自分に、助けを求める資格はない。
屋上での校則違反から始まったことだが、全生徒から軽蔑の眼差しを向けられてる今の状況こそ、今の自分に相応しい罰。
常識も道徳もかなぐり捨ててシャッターを押してきた自分には、むしろ軽いぐらいの……。
「……」
リビングへ戻ると、矢代は変わらずビールを飲んでいた。もう三本目だけど、普段からこれぐらい飲むんだろうか。
「先生」
いや、無理して酔ってる様に見えた。
原因はわかってる。
「何か俺、クラスどころか学校一の問題児だったみたい……」
秋は引き攣った笑顔で、矢代が座るソファの肘掛けに寄りかかった。
「最悪だね。親友すら騙してさ。こんな最低な奴、捜してもそうそう居ないよ。ゲイの方が簡単に見つかると思う」
「……」
矢代はビールを置くと、秋の腕を引っ張った。
「わっ!」
そのせいで秋は横に倒れ込み、そのまま矢代の腕に抱かれる体勢となった。
「大体の物事はなるようになるだけだ。今が最悪なら、後は上がるだけ」
「……」
矢代は秋を抱き起こし、自分の膝の上に乗せた。彼の髪を丁寧に梳き、少し火照った顔で続ける。
「盗撮は俺がお前にやらせていたことだ。本来罰を受けるのは俺の方なんだよ」
変な体勢のまま彼の話を聞く。
それなのに、ずっとこうしていたいと思った。
「良くも悪くも、俺はお前を変えた。体も心も、環境も。俺は一生をかけて、その責任をとるつもりだよ。もう絶対、お前を離さない」
1
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる