シャッターを切るときは

七賀ごふん

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考察⑵

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「駄目か……」

一旦は廊下へ出たが、秋を追いかけることは諦め、苅谷は生徒会室に戻った。

わずかに聞き取れた声。彼は確かに謝った。その横顔はひどく弱々しく、壊れそうで……間違いなく追い詰められたんだと分かる。
例え人に言えない事情があったとしても。

苅谷は須佐を鋭い目つきで睨んだ。
「お前、あの子に何しようとしてたんだよ」
「何にも。“本当に”やる気はなかったよ」
苅谷は舌打ちして、やや乱暴にドアを叩いた。
「泣いてたぞ。よっぽどのことがあったんだろ」
「よっぽど疚しいことがあったんだろな」
苅谷は拳を握り締める。そしていつもの口調に戻り、踵を返した。

「そうかよ。もう……もういい。俺に愛想が尽きたんだろ? それならそうと言えばいいのに」
「はっ?」

須佐は椅子に腰掛け寛いでいたが、急に話の風向きが変わって固まった。
「前から風間君のこと気に入ってたもんな、お前。でもまさか、こんなやり方でフッてくるとは思わなかった。マジで最悪だよ。帰る」
「は? おい、進……!?」
須佐の制止を聞かず、苅谷は強く生徒会室のドアを閉めて歩き出した。彼のことが少し気掛かりだが、今何とかするのはちょっと無理だ。
眼鏡を外して、目元を袖で乱暴に拭った。

「なんなんだよ……」

男同士で二股とか、正直笑ってしまいそうだ。あまりに馬鹿馬鹿しい。
でも、須佐は……彼はそんなことはしないと思っていた。馬鹿な思い込みをしてしまったと心底後悔する。
自分に嫌気が差したならこんな回りくどい事をせず、直接言えばいいのに。

わざわざ“矢代先生に伝言”して、生徒会室に自分を呼び出して。
風間君を襲ってる所を目撃させるなんて悪趣味すぎる。
もう……終わりかな。

彼との関係も。
教室へギターを取りに行こうか迷った。でも今は、とても部活に顔を出せる気分じゃない。待たせていた部員には悪いけど、今日は帰ろう。
もう疲れたから、眠って全部忘れたい。



 
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