シャッターを切るときは

七賀ごふん

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考察⑴

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静まり返る生徒会室では、依然として中央に佇む二人の生徒がいた。

「いやっ……今のは……っ」

言ってはいけないことを言ってしまったと、秋は心底後悔していた。
会長が生徒会の苅谷さんと付き合っていること。
それを、自分が知っていることを。

「……ふぅん」

彼自身に知られるのは、絶対にまずかったのに。
「わっ!」
直後、強い腕の痛みと共に、視界が反転する。秋は力任せに床に組み伏せられ、須佐に見下ろされる形となってしまった。
「苅谷……か。やっぱ知ってたんだね、俺が進と付き合ってること」
口元は笑っている。しかし目元は影のせいでよくわからない。
でも多分、笑ってない。見えてしまったら、きっと戦慄するような眼差しをしていただろう。
「嘘に嘘を重ねまくってんね。これじゃその子に見放されるのも無理ないよ」
「……っ」
須佐の言葉は確かに、心の中の的確な場所に突き刺さった。
確かに、今まで付き合った奴らを味方だと思ったことなんてない。
でも、敵だと思ったこともなかった。その考えは間違いだったんだろうか。

大体“その子”って誰のことだよ。
訊きたいけど、絶対答えてくれないだろう。
仮にわかったところで解決策もない。

全てが自業自得なのに、おかしくなってしまいそうだった。

「正直に目的を話すなら何もしないよ。それでも意地張って話さないって言うなら、もう二度と俺らを嗅ぎ回ることができないようにする。乱暴するとかじゃなくて、とっても穏便な方法でね」

須佐は秋が抵抗できない様に体重をかける。強く、有無を言わさない視線を向けながら。

どうしたらいいのか、混乱した頭じゃ何も思いつかない。
正直に話したら自分は勿論、矢代もタダじゃすまない。でもしらを切ったら、もっと大変な目に合う。
須佐の手が下へと移っていく。秋は目を強く瞑った。

助けて、先生……っ。
心の中で叫んだ時、重く閉め切っていた生徒会室のドアが開いた。




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