シャッターを切るときは

七賀ごふん

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考察⑴

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秋が須佐と生徒会室で対峙してる時間、職員室は束の間の静寂が流れていた。

「……今日は朝から騒がしかったな。生徒達の間で何かあったのかも」

矢代は自席で冷たい缶コーヒーを開ける。その隣で同じ二年の担任をしている藤間が小声で返した。
「多分アレだろ。風間、っていったか。あの子のことじゃないか」
「っ!?」
矢代はコーヒーを吹き出しそうになった。何故、彼の口から秋の名前が出てくるのか。

「風間がどうかしたのか?」
「あん、知らないのか? まぁ俺もクラスの生徒から聞いた話だけど……ちょっと、可哀想な噂が広まってるみたいだぞ。場合によってはお前が出動かもな」

……数分後、矢代は廊下で肩を落としていた。

クーラーのきいた職員室から出ると、校内は灼熱地獄のよう。なのに、さらに高まるような問題が浮上してる。

まさかそんな事になってるなんて……。

放課後、矢代は廊下を歩きながら秋を捜していた。
教室には既に居なくて、もう帰ったのかと思ったが下駄箱に靴は置いたままだ。まだ学校に居るはずだが……どこに行ってしまったのか。
こんな時に連絡はつかない。何のためのスマホだ、と少し憤りを感じる。
「あっ、矢代先生だ。ウィッス! チッスチッス!」
「小塚」
バッタリ廊下で鉢合わせて、歩みを止めた。

「ちょうどよかった。お前、風間を知らないか?」
「え? さぁ~……鞄持ってたから、もう帰ったと思いますよ。今日は疲れたんじゃないかな……」
小塚は少し眉を下げ、視線を外した。
それだけでどういう状況なのか理解した。
「そっか、悪いな。お前はこれから部活か」
「ハイ。あ、そういや苅谷先輩が先生に用事あるって捜してましたよ!」
「わかった。ありがとう」
小塚の後ろ姿を見届けて、止まっていた思考を再び巡らせる。
 
 ───秋がゲイだと、学校中で噂されてるらしい。

藤間が言っていたことだが、小塚の口ぶりからしても間違いないだろう。
噂の出処はひとつ。昨日の今日で、あまりにも分かりやすい。目的までは分からないが、須佐が言いふらしたんだろう。

「あ」

あいつもしかして、生徒会室に行ったのか。
須佐のところに一人で行くなんて危険極まりないが、彼ならやりかねない。急いで確認しに行くか。

もし秋があそこにいるとしたら、かえってチャンスだ。須佐には悪いが、噂を広めた分は反撃させてもらう。



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