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考察⑴

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二年の風間は、同性愛者。そんな噂が学校中で広まっている。

「はぁ……っ」

走り疲れて脇腹が痛い。髪や制服も相当乱れた様に思える。いつもなら難なく入れる教室も、今日だけは超難易度ダンジョンのようだ。
息を切らしてようやく教室へ入った秋に、満面の笑みで駆け寄る生徒がひとり。
「待ってたわよ、秋ちゃん! 新鮮な男の子がたくさんいるけど、今日はどの子にする? みーんな現役男子高校生よ!」
小塚だった。秋は考えるより先に、彼を思いきり蹴飛ばす。
「そういう冗談、次言ったらぶっ飛ばすぞ」
「もうぶっとばしてるじゃねえか!」
その通りだが、それに反応する余裕もない。秋は床にひれ伏す小塚にもう何発か蹴りをいれた。

「はいはいストップ! 小塚が絶対悪いけど、風間も落ち着けって」

とうとうクラスメイトが総出で仲裁し、(秋ひとりによる)暴動は収まった。

「風間、心配しなくてもあんなウワサ、誰も信じてねーよ」
「そうだよ、お前好きなグラドルの話するときだけテンション上がるし」
「みんな……」
クラスメイト達の言葉が素直に嬉しい。先程までの疲れが少し和らいだ気がした。
けど、誰からその噂が流れたのかは分からないようだった。
「俺は他のクラスの奴が話してんのを聞いたんだよな」
「俺も。あと、お前女を泣かすクソ野郎ってことで知れ渡ってるぞ」
なるほど。
やはり昨日の昼間の件が原因か。でも、たった一日でこんなに広まるのは有り得ない。意図的に、悪意を持って誰かが広めている。

昼間の出来事だから、考えてみたらまだ半日だ。それに内容だって、大したことは話してない。ゲイだと結びつけるようなキーワードはなかったはずだし、絶対に密告者がいる。

くそ……分かったら今すぐぶん殴ってやるのに。基本やられたらやり返す主義なので、犯人が分からないのは非常にもどかしい。

「まぁ、ただの噂だろ。気にすんなよ、秋」

小塚に頭をぽんぽん叩かれ、大きなため息をついた。

「おーい、ホームルーム始めるぞ。全員席につけ」

討論している最中、矢代が教室へ入ってきた。クラスの皆蜘蛛の子を散らした様に自分の席につく。
一瞬だけ、彼と目が合ったが……秋の方から視線を外した。




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