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考察⑴

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いやもう、久しぶりに頭にきた。

秋は昇降口へ行き、この苛々をどこへぶつければいいか考えていた。
元はと言えば自分のせい。だが大元は矢代のせいだ。冷静になればなるほど、諸悪の根源は彼だという結論に至る。
でもむしゃくしゃしてるのは単純に、彼の心ない言葉に傷ついたからだった。それを怒りに変えて、紛らわしたいだけ。

……はぁ。

怒ると喉が乾く。自販機で炭酸飲料を買い、その場で飲み干した。昼間の件もあって、今日は売店に行くのは気まずい。
一気に流し入れたジュースは涙が出そうなほど辛かったが、おかげでスカッとした。先ほどの苛々も嘘のように飛んでいってしまい、我ながら単純だと再確認する。

そうなると頭に浮かぶのは、会長の須佐のことだった。

付き合いたいなんて絶対嘘だと分かるけど、なら何でそんな嘘をついたのか。……それがイマイチ分からない。

そもそも、苅谷さんは知ってるのかな。恋人である会長が、学校中の男子とイチャついてること……。

会長は矢代に対しても、自分がゲイだと明かした。普通なら有り得ない。教師なら口外しないとタカをくくってるとしても、受験前に職員室に行きづらくなるだろうに。

何のメリットがある……。

男相手に告白されたにも関わらず、それほど狼狽しなかった俺を見た……証人でもつくろうとしていたのか?
分からないけど、とにかく会長と関わらずに過ごす方法を考えた。結果たいした解決策は思いつかなかったけど、まぁまだ大丈夫だろうと思い。

翌日はいつもどおりに登校した。
────いつもどおりの、学校のはずだった。

朝、遅刻すれすれの時間。知らない男子生徒から声を掛けられた。多分、もう四人目だ。

「あっ、あの。二年の風間先輩ですよね? 実は、その……先輩がそっちの人だって聞いて、良かったら話ちょっとできないかなって」
「いや人違いです」

秋は登校してから、異常事態が発生していることに焦りを覚えていた。
どんなに振り切っても忍び寄る影、突き刺さる視線。男子校という名の魔の巣窟を逃げ回る。

しかし校内にいる時点で逃げ場などなかった。知り合いでなくても、同学年ならほとんどの生徒が見た目が派手な秋を知っている。この時ばかりは髪を明るく染めてることを後悔した。
「あ、風間。聞いたよ。お前実は……あっ」
続きが聞こえないスピードで知り合いの横を走り過ぎた。
泣きたくなる。……まさかこんなことになるなんて。
考えてみれば当たり前のことなのに、考えが浅すぎた。



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