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考察⑴
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しおりを挟む「つ……?」
付き合う。って訊いたのか? 何で?
「俺さ、体育祭で君を見た時から気になってたんだよ。すごく印象的だったから、あれからもう忘れられなくて……気付いたら君のこと考えちゃってんだ。これってやっぱり、恋なんじゃないかなぁ」
つらつらと述べる会長から視線を外せない。
「あの~、一応訊きますけど、冗談ですよね?」
「ん。本気だよ。だから返事聴かせて」
「返……」
最悪だ。変わってるとは思っていたがここまでぶっ飛んだ思考の持ち主とは思わなかった。矢代の視線が痛い。
彼は黙って佇んでいるが、眼は「断れ」と言ってる……気がする。
そうだよな。躊躇うまでもない、普通に断ろう。
「その、すいません。俺は会長のこと全然知らないから……付き合うっていうのは、ちょっと考えられなくて」
「それは俺も一緒だよ? だからお互い絆深めて、頑張ろうって言ってるんじゃん。っていうか」
須佐は、秋の鼻先にまで顔を近付け、口端を上げた。
「良かった~。君、やっぱり“男”と付き合うことできるんだ?」
「っ!!」
須佐の確認の言葉に、思わず息を飲む。
しまった……。
もしかしたらさっき、とんでもない墓穴を掘ってしまったかもしれない。
「普通こんな風に告られたら、男は無理って断るでしょ。でも君は、“男だから”じゃなくて、“俺を知らないから”付き合えないんだよね?」
「そ……それは」
“普通”の基準を間違えた。というか、完全に油断してた。
そうだ。彼は自分を知らない、けど。
「それに何か反応薄いよねぇ。もしかして俺がゲイだってこと、前から知ってた?」
「いっ、いや……」
図星だ。彼がゲイであることを認識していたから、“普通”に質問に答えてしまったのだ。
彼の言う通り、本来ならイエスかノーの中間、「同性は無理」という素晴らしい回答があったのに。
……あぁ。
馬鹿だ。
「俺、集会とかも真面目に聞かない方だったから、会長のことは全然知りませんでした。男とも、付き合いたいとは……思わないです」
「ふーん。……だってさ、矢代先生」
須佐は後ろに引き、脚を組む。すっかり外野となっていた矢代に声を掛けた。
「残念ながらフラれちゃったけど、とりあえず俺は“そっち”の人なんだ。風間くんは違うらしいけど」
「……」
さすがの矢代も、返す言葉がないといった様子だった。
「はぁ、俺の秘密だけ知られちゃって残念だなぁ……。風間君も秘密とかないの? 売店のお姉さんには言えるけど、周りの友達には言えないヒミツ」
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