シャッターを切るときは

七賀ごふん

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盗撮⑵

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「あっ。生徒会長」

誰かが呟いた。嫌な汗が全身から噴き出した様な気がする。知らないふりをして、後ろも振り返らず立ち去りたい。
ところが、掠めるように肩を叩かれた。
「やっ、風間くんじゃーん。元気?」
飄々とした態度で現れた須佐。
そしてその隣には、生徒会書記の新里もいた。
「維さんも久しぶりー。ねぇ、何の話してたの?」
「須佐くん」
そこで維は初めて、周りの人だかりに気付いた様だった。
「ええと……ううん、なんでもないよ」
ちょっと今さら過ぎるが、それでも維は誤魔化そうとしてくれた。だが当然、その程度で流せるはずがない。
「ふーん? 何か面白い話してた様に聞こえたけど」
「そ、そんなことないわ。よね、風間くん」
「えっ」
急に話を振られて焦ったが、むしろ好都合だと思い激しく同意した。

「はい、冗談話してただけで……維さんも演技が大袈裟ですよ~」
「ふざけてごめんね。風間くんっていつもノリがいいから盛り上がっちゃった」
維は慌ててレジへと入って行く。
「そっか。冗談ね」
須佐は相変わらず笑顔で腕を組んだ。
どうやら分かってくれたようだ。秋は安心した。

「じゃあ維さん、また……。本当そのことは気にしないでいいから」
「う、うん。ごめんねぇ……」

ある意味来た時より絶望的な表情の維を置いて、秋は人の列を抜けた。

……。

店の入口に立っていた須佐と目が合ってしまったが、軽く会釈して横を通り過ぎる。
できるだけ関わらないようにする。それは矢代先生の言ってた通りだと思う。
再び間近で顔を合わせて実感した。
この人は本当に、冷たい眼をしてる……。

「……」

去っていく秋の後ろ姿を見据えて、須佐は頭を掻いた。
「あの子、二年だろ。知り合い?」
隣にいた新里が尋ねると、須佐は頷いた。
「まぁ、ちょっとだけ。それより……」
須佐はいつもの張り付いた笑顔を崩す。
そして、ようやく最後の客を見送った維が立つレジに頬杖をついた。

「維さん、何か隠し事してんじゃないのぉ?」

維はぽかんとしたが、ほんの少し唇を引き締めた。
「何のこと? 何にもないよ」
「ひどいなぁ、俺ら親友でしょ。俺、維さんの大事な秘密も知ってるのに」
須佐が片手を揺らすと、維は困った様に背を向けた。

「そうだね。でも、風間くんも親友なの。どっちが優先とか、そんなのはないよ」



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