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盗撮⑵
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しおりを挟む翌週は、本格的な夏が始まった。変わったのは気温と、中間テストの勉強。秋は夏服に着替えて、いつもと変わらない学校へ向かった。
「暑……っ」
苅谷からもらったチケットで、小塚はライブを存分に楽しんだらしい。秋もお礼として彼から昼を奢っもらったりと、まぁまぁ有意義に過ごした。
淡々と、平坦な日々が流れる。大きな悩みがなくなったとはいえ、大した刺激もない。担任とはこれまで以上に奇妙な関係になってしまったからだ。
「あぁっ! 風間くん!」
お昼休み、人で賑わう売店。そこに顔を出した秋は、駆け寄ってきたひとりの女性に戸惑った。
何故なら今にも泣き出しそうな、切羽詰った顔をしていたからだ。
「維さん。ども、お久しぶりです」
そう、今日は久しぶりに維に会いに来た。
だから普通に挨拶したのだが、彼女の瞳は何故かさらに潤んだ。
「あれ。ちょっと、どうしたんスか」
「風間くん、私……私……っ」
エプロンがよく似合う天使の様な彼女は、口元を手で覆って俯いた。
「もう、私に会いに来てくれないかと思ってた……でも何とかして謝らなきゃって思ってたから……来てくれて嬉しいよ。本当に、ずっと会いたかったの」
「えぇっ?」
話が掴めず、秋は困惑した。彼女は一体何を申し訳なく思っているのか。
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