シャッターを切るときは

七賀ごふん

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盗撮⑴

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誰もいない夜の廊下を、手を繋ぎながら歩いた。
道中、心中は穏やかじゃなかった。羞恥心で押し潰される寸前。こんな事でドキドキしてる自分が正直信じられない。今まで付き合った人間なら全員手を繋いだことがあるのに。

もちろん校内でこんなことをして、誰かに見られたらアウトだ。スリルを味わってると思えばドキドキするのも普通。
……でもやっぱり、自分だけ舞い上がってるように感じる。
セックスまでしてるのに、何でこんな事で意識しているのか分からない。

「そういえば……」
「ん?」

急に口を開いた矢代に、今度は全神経が集中した気がした。

「どうしたの?」
「以前も話したし、まず関わることもないと思うけど。……生徒会の奴らには気を付けろよ。お前が思ってる以上に変人の集まりだから」

彼は振り返りもせずそう言った。しかし、彼に変人と言われるなんて彼らも不憫だ。
心の中だけに留め、怪訝な表情で話す彼を見上げる。

「要するに、今まで以上に注意して行動しろってこと」
「いまさら何言ってんだよ。それに、盗撮をしないならもう大丈夫だって」

盗撮した写真は矢代に見せたら全て消去してるから、今は証拠すら存在しない。 
「そうだけど、俺が言ってるのは写真のことだけじゃなくて……」
矢代は異議を唱えようとしたが、秋は一貫して言い切った。
「大丈夫だよ。関わらなきゃいいんだろ?」
部活も何も所属してない自分は、生徒会と関わることなどまず有り得ない。だから真面目に取り合おうとしなかった。
……この時は。

「……わかった」

矢代はボリュームが落とし、短く頷いた。
「じゃあ俺は職員室に戻るから。お前は寄り道しないで帰れよ」
握っていた手は離れ、お互い向かい合った。
「うん。じゃあね」
「あぁ。後、知らない人間に色気を出すなよ」
「一度だって出したことねえよ」
秋は顔を真っ赤にしながら帰って行った。


……。


彼の後ろ姿を見守りながら、矢代は目を細める。
秋の言う通り、自分は弱気になってるのかもしれないと思っていた。今までと違って、これからは彼に危険な真似をさせたくないから。
勝手な都合で振り回してきたけど───これからは、何としても彼を守っていきたい。

「矢代先生?」

足音が響く。隣を見ると、そこには三年の苅谷が立っていた。
「あぁ、お疲れ様」
「お疲れ様じゃないですよ、先生。今日は部活に顔出すって言ってたじゃないですか」
苅谷は眠そうな顔で話した。
普通なら怒る内容だというのに、どこか他人事の様な口調で。





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