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洞察⑶

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「入れろって言ったり入れるなって言ったり。……できれば統一してほしいところだけど」
秋の誘いの言葉に、矢代は心底嬉しそうに微笑んだ。

「……まぁいいか。可愛いから」

ベッドに手をつき、再び秋の脚の間に顔を沈めた。秋は密かに思案する。

可愛い……?
この鬼畜教師の口からは聞いたことがない言葉だ。その意味を考えようとしたけど、波のように訪れる快感のせいで頭が上手く回らない。
男に使う形容詞じゃないことはわかる。
でも、ずっと気になってはいたんだ。
彼の本当の気持ちを。 
「先生……は……っ」
激しい愛撫に、まともに言葉を発することができない。
それでも確かめたい。
「俺を、どうしたいんだよ……っ」
秋の言葉に、矢代は動きを止めた。
急に静かになってしまって気まずい。変なことを訊かなきゃ良かったと後悔し始めた頃……。
「そうだな。あえて願望を言うなら」
矢代は手を止めて、瞼を伏せる。

「お前が欲しい」

彼は、実に堂々と言い切った。
そして、それだけに軽い響きに聞こえてしまって駄目だった。

「何で? ……俺のこと好きなの?」
「当たり前だろ。好きじゃなきゃこんなことするか」
「嘘。いつも俺にだけキツいことするじゃん。言うことも全部……クラスで俺にだけ」

涙で滲む瞳で見返すと、矢代は不思議そうに肩を竦めた。
「それは愛があるからだろ。俺は好きじゃない相手にはギャーギャー言わない。なるべく関わらずに済まそうとする」
矢代はそう言うと、いつも生徒を悩殺するサービススマイルをしてきた。
こういう所が信用できない理由の一つなのだけど、本人に自覚はないらしい。
「本当に俺のこと好きなら、もっと優しくしてよ」
今までの出来事を振り返ってみても、結構ひどい扱われ方をしてきたと思う。稀に優しい時もあったけど、それは何かノーカウントで。

「これでもお前のことは特別扱いしてるんだよ。周りに気付かれないように色々手回しもしてるし」
「俺の知らない所で……だろ? 今は俺への接し方の話をしてるんだ」

秋はムッとして言い返すが、矢代は相手にしない態度で軽く笑った。
「さっきからやけに女々しいな。何が言いたいんだ」
「俺も分かんないけど。嫌なんだよ! 今の……俺達の関係が」
少しだけ声を荒らげて、秋は俯く。
怒ってるわけじゃなくて、動揺してるんだ。自分でもこの気持ちの理由が分からないから。




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