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洞察⑶
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しおりを挟む「帰ったな」
矢代は物陰から身を乗り出して、廊下まで確認した。
「はあー……! 腰が痛い」
長く床に座り込んでいた為、ついた埃をはたき落として背伸びをする。再び奥のベッドに移動し、陰で座り込んでいる彼に声を掛けた。
「もう出てきて大丈夫だぞ。鍵もかけたから」
これで心配ない。安心させる為矢代はベッドの方へ回り込んだが、秋の反応は薄かった。
「秋? 続きやんなくていいのか? 結局イってないんだろ」
矢代が身を乗り出して覗き込むと、秋は慌てて下半身を隠した。
「もう大丈夫。ひとりでする」
「またまたどういう心境の変化だ? さっきは泣きそうになりながら入れてくれって頼んでたくせに」
「……っ」
秋は押し寄せる羞恥心から、さらなる後悔に押し潰される。
だから嫌なんだ。
正気に戻ってからじゃ、間違っても自分から彼を誘うなんて出来やしない。そんな恥知らずな真似は、快感に溺れてる最中しか無理だ。
「もう、頭がメチャクチャな時に抱いてほしかったな……」
秋は独り言として呟いたが、それはとんでもない失言だった。
「何、抱いてほしい?」
「うわあぁあぁ……今のはナシ! 忘れて!」
さっきから失言の連続だ。
秋は膝に顔を沈めて自分の不注意さを呪うが、反対に矢代は機嫌を良くしてしまった。
「本音っていうのはふとした時に出るもんだ。俺とのセックスが気持ちよかったってことでいいか?」
しかし本音のわけもなく、秋は顔を赤くしながら猛反論する。
「違う! もうこの話は止めよう、終わり!」
「止めようって言ったって、こっちは何とかしなきゃだろ」
矢代は強引に秋の腕を引き、ベッドの上に押し倒した。
「もう周りを気にしなくていいから。好きなだけ抱いてやるよ」
矢代は馬乗りになって、秋の下衣を引き剥がしてしまった。
「我慢してたのは俺も同じだからな。これから望み通りメチャクチャにしてやる」
「だからそれは違……あっ」
秋はあくまで否定しようとしたが、熱の部分を直に舐められて言葉を失う。
「ひっ、ん……っ」
とけてしまいそうな……ずっと浸っていたい快感だった。
けど、これでも足りない。
気持ちはさっきと同じだ。前ではなく、後ろに。
「先生……つらいなら……早く、入れなよ」
どれだけ憎まれ口を叩いても意味がない。───もう、取り繕うことはできなくなっていた。
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