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洞察⑶
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しおりを挟む体育祭が終わって、はや一週間。
嵐が過ぎ去った後みたいに学校は平和だった。
───ただひとり、風間秋を除いて。
陽が落ち始めた夕方、校舎の一番端に追いやられた保健室で、秋はスマホのカメラを弄っていた。今は撮った写真を整理していたが、廊下から響く足音に気付きドアの方へ視線を向ける。直後、ドアが開かれた。
「よっ。こんな所に居たのか」
「……」
颯爽と登場した端整な顔立ちの青年、矢代光希。この学校で生徒から絶大な人気を得ている教師だ。そして、秋の担任でもある。
「保健室に来いなんて言うから何事かと思ったけど。怪我したわけじゃないみたいだな」
彼はそこに立っているだけで絵になる。それは歩けば尚さらで、秋にとっては心底面白くなかった。ただ、ここら辺は彼の人格がどうこうじゃなくて、完全に嫉妬の域に達している。
「で、……収穫は?」
距離を縮められて思わず後ずさった。
これだけで分かる上下関係。主導権を握る者と、そうでない者の距離感。
秋はひたすら押し黙っていたが、諦めたように手に持っていたスマホを投げ渡した。
「こら、物は大事にしろ。……お、よく撮れてるじゃないか。これは一年生だな」
矢代が受け取ったカメラの画面には、二人の男子生徒が……抱き合ってキスをしている、とてもプライベートなシーンが映っていた。
「ここで撮ったのか」
「あぁ。ベッドがあるからかな。ここで張ってると面白いぐらい見つけられるよ。既に二組だし」
本当に、願ってもない出来事だ。
基本保健医は職員室へ呼びに行かないと居ないから、生徒の出入りも少ない。
この保健室は、隠れて会うにはおあつらえ向きの場所なんだろう。おかげで凄い収穫。労せず、順調にカップルをカメラにとらえることができていた。
「お前も目敏くなったな。もっと情報を集めたりして地道に捜せば良いのに」
「そんなの疲れるし、時間がいくらあっても足りないだろ」
「それはそうだが……これだと色々刺激が足りない」
矢代は拗ねた子どもの様な口調になった。
「楽しみたいなら、もっとマトモな趣味見つけたら? そうすりゃもっと人生充実するよ」
秋が皮肉を込めて返すと、矢代は気を取り戻した様子でベッドに座った。
「心配ないよ。おかげさまで、俺の毎日は充実してるから
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