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洞察⑵

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「ちなみに新里は、俺とちょっと付き合ってみてもいい、とかないの」

須佐は席に座ったまま、顔だけ振り返って目を細めた。しかし対する新里は険しい顔で机に腰掛け、力強く即答する。
「あるわけない。お前に合わせてる、進が本当に気の毒」
「まーな。でも、強要はしてない」
一年前、告白してきたのは進の方だ。互いにゲイということをアウティングして、須佐は進を受け入れた。
そして進が自分受け入れていることも変えようのない事実だ。
須佐は元々、ひとりの人間に入れ込む性質ではない。優先順位は間違いなく確立しているが、恋人の進を裏切らない程度に日々“楽しんで”いる。
そしてその秘密は、親友で同じ生徒会の新里だけが知っていた。

「それならな、須佐。もう少しバレない様に努力しろ。俺に対してもそうだけど、他の奴にちょっかい出して楽しんで……進はお前との関係、絶対バレたくないはずだし」
「わかってるよ」
「わかってないから言ってんだよ。知ってるのが俺だからいいとして、お前らの関係を他の人間が知ったらとんでもないことになるぞ」
新里の忠告を聞きながら、須佐は机に置いていた缶コーヒーを口にする。

「わかってるって言ってるだろ。もし“ソレ”の証拠になるようなモンを持ってる奴がいたら、どんな手使っても俺が消すからさ……心配いらないよ」

そう言う須佐の目はひどく冷たい。
新里は嫌な予感がした。それを悟られないよう、黙って脚を組む。
「そうだ、新里。チラッと小耳に挟んだんだけどさ。何か最近、ゲイを捜してる奴がいるんだって。知ってる?」
「うげぇ、何だそれ。知るわけないだろ」
周りの生徒に聞こえないよう、二人は小声で話した。

「俺も詳しくは知らないよ。本当かどうかも分からない。でもこの学校でゲイについて調べてる奴がいるってのを聞いてさ。もし本当にいるなら、何が目的で、誰が調べてんのかな、ってちょっと気になってるワケ」
「……そいつもゲイなんじゃないか? 自分に脈がありそうな奴を捜してるとか」
「はははっ、そりゃケッサク」

須佐は脚を組んで、楽しそうに笑った。

「すっごい興味あるね。それとすげぇ追い詰めたくなる。そいつがどういう事情でゲイを捜してんのか知らないけど……半端な気持ちで他人の関係に首突っ込んだら痛い目見るってこと、直に教えてやりたいんだ」




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