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洞察⑵

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「あの茶髪の子、かなり速かったなぁ。全く見覚えないけど陸上部かな? 先生、知ってます?」

リレーが終わった後、グラウンドのテントの中で、須佐は興味深々で選手達を見た。
「帰宅部だよ。それと俺のクラス」
その隣で矢代が淡々と答える。
彼らの視線は、たった今堂々一位で走り終えた少年を向いていた。日陰の冷たさに包まれるこちらと違い、グラウンドは眩い別世界のように見える。
「こっからじゃしっかり見えないけど、イケメンじゃないスか? 名前教えてくださいよ」
須佐は矢代を見ずに、弾んだ声でそう頼んだ。
「……」
対する矢代は少しだけ間を置いて、やはり彼を見ずに答える。

「風間秋」

矢代の回答を聞くと、須佐は満足そうに頬杖をついた。

「どーも。風間君ね……覚えとこーっと」




同時刻、二年の席では歓声が上がっていた。
「アキ、やったな! やっぱすげーよ、本当に一位取っちまうなんて!」 
「小塚……お前最下位だったけど、ライブのチケットもらえんの?」
「大丈夫! 俺か、俺の友達が一位取ったらくださいって言っといたから!」
「あ、そう……」
熱い。それに息苦しい。全力疾走がこれほど辛いとは……。
でも、一位になれたからいいか。

「風間すげー速かったよ! 小塚は、まぁ頑張ってたよ」
「あはは……」
気付けばクラスの生徒達はみな秋の周りに集まっていた。この良い雰囲気で注目を浴びる瞬間は悪くない。結果的な話になるけど、走って良かったと思った。動機はかなり不純な気がしたが。
「おし、今日終わったら皆で打ち上げ行こうぜ!」
すると突然、小塚がそんな事を言い出した。
「おぉ! いいねー!」
彼の提案にクラスは大盛り上がりになった。
一体感がより高まってからリレーや騎馬戦、その他の目玉の種目が無事終わっていき……ついに閉会式の時間を迎えた。
終わりの言葉まであの少年が任されているようで、朝と同じ挨拶が流れる。

「いやー、今日は本当に疲れ……じゃない、素敵な一日になりました。クラスの絆も深まったりしたんじゃないかと思います。ハイ、とにかく皆さんお疲れ様でした!」

あんな適当な調子でよく務まってるというか、選考されたなと思う。
「それじゃあ一組から各クラス順番に戻って、ホームルームまで大人しく……あ、待機しててくださいね」
音声が切れて、校庭の生徒達は順々に校舎へと戻って行く。
「アキ、俺らも戻ろうぜ」
「あぁ」
本当に汗をかいたけど……こうして、二年生の体育祭は幕を閉じた。




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