シャッターを切るときは

七賀ごふん

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洞察⑵

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「誰もお前が悪いなんて言ってないだろ。でも怒るってことは心当たりがあんの?」

須佐の挑発的な発言に、苅谷はとうとう舌打ちした。
「お前……」
苅谷は一歩前に踏み出す。さらなる喧嘩に発展するように思われたが、それは一人の制止によって防がれた。

「はいはい、そこまで。これから楽しい体育祭だぞ。須佐、苅谷を怒らせてる場合じゃないだろ?」

苅谷の頭に手を置いて、颯爽と現れたのは矢代だった。彼は二人を交互に見たあと、後ろに振り返って微笑む。
「お前らが争って、体育祭が盛り上がるならそれはそれで面白いけどな。なぁ、新里?」
「い……いや、それもどうなんでしょ……」
矢代の後ろにいた生徒は突然話を振られ、困惑する。
「矢代先生、俺だけ悪者ですか? いつも苅谷の味方すんのは誰が見てもえこひいきですよ」
「ははは。……まぁ冗談は程々にして、ちゃんと仕事しろよ。くれぐれも平和にな」
最後は低いトーンで釘をさす。須佐はハイハイと同意したが、苅谷だけは納得のいかない顔で黙っていた。




「ふあぁ……」
「んあ。アキ、眠い?」
「あぁ、昼飯食うとさ……」

何だかんだ言って体育祭は順調に進み、とうとう昼休憩に入っていた。秋と小塚は隣同士で顔を見合わせる。
「ハッつうかもうすぐだ。アキ、コンディションはどう?」
「普通。もうお前の執念には負けたよ。頑張るか」
それを聞いて小塚は嬉しそうに笑う。秋もつられて笑った。
「あ、でも喉渇いたから飲み物買ってこようかな。お前も何か飲む?」
「サンキュー。それじゃエナジー系で」

小塚から小銭を受け取り、秋は校舎へ向かった。 
昇降口の手前にある自販機で飲み物を二本買い、また来た道を戻っていく。そろそろ出番の為、歩く速度を速めた。
その途中、見覚えのある影が見えた。二人いるようだが、彼等は中庭で隠れるようにして話している。
「……?」
妙だ。ただの友人にしては、距離が近すぎる気が……。

「何してんだ、秋」
「ひっ!」

別にいやらしい気持ちで盗み見してるわけじゃなかったのに、マヌケな声を上げてしまった。
「あぁ! もう、ビックリさせんなよ!」
「普通に話しかけただけだろ」
秋が振り返った先にいたのは、至って冷静な矢代だった。
少し楽しそうな表情を浮かべてるのは気のせいか?

「相変わらず目敏いな。……カメラ、用意しなくていいのか? カップルじゃないからカウントはしないけど、趣味として撮るぶんには構わないよ」
「だからそんな気持ち悪い趣味は持ってねえよ!  ていうか、 ……え? どういうこと?」




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