シャッターを切るときは

七賀ごふん

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洞察⑵

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六月十八日、晴天。   
この日はいつもと違う活気で学校中は溢れ帰っていた。

「体育祭だー! とうとうこの日が来たな、秋っ!」
「そーだな」

全校生徒が校庭に集まるという数少ない機会。体育会系は待ちに待ったであろうイベント、体育祭が始まろうとしている。
秋は小塚やクラスメイトと一緒に並んで、開会式を受けていた。
「……では次に、生徒会長から」
「どーも生徒会長の須佐です! おはようございまーす!」
マイクをひったくる形で、ひとりの少年の高らかな声がグラウンドに響いた。
「生徒会長テンション高いなー。まぁあの人出る種目かなりあるから」
誰かの言葉が耳に入る。
「皆さん楽しみですねー! え? あんまり楽しみじゃない? いやいや、そんな訳ありませんよね! ハハハ!」
須佐のテンションは非常に高い。誰も頼んでいないのにひとりでトークをしてしまう程だ。

「わ、いつもよりやばいぞ」

とうとう小塚までもが耳打ちしてきた。
見れば、隣に佇む教師達もだ。呆れている。ハラハラしてる者から、イライラしている者まで。
しかし矢代だけは柔和な表情をしている。その間に須佐のトークは終わりを迎えようとしていたが、流れは思わぬ方向へ。
「……っと、挨拶はこの辺にしときましょうか。それで、本大会のルール事項は……じゃあ、副会長の苅谷君にお願いします!」
須佐は突然、後ろに控えている眼鏡の少年、苅谷にマイクを手渡した。
会話の内容は校庭に並ぶ生徒達には聞こえないが、苅谷は確実に嫌がって、須佐と揉めている様に見えた。
しかし生徒達の視線に気付いたのか、諦めてマイクをとる。

「ふ、副会長の苅谷です。それじゃ簡単に各種目の獲得点なんかをお話します……」

彼が話し始めた途端、妙な歓声が聞こえた。だが野次を飛ばしている感じではない。
「なぁ、何か騒がしくない?」
秋は小塚に話しかける。すると、彼は納得したように頷いた。
「あぁ、苅谷先輩は人気あるんだ。軽音部でボーカルやってっから」
「へぇ……」
「で!! リレーで優勝したら、あの先輩がライブのチケットくれるって約束してくれてんだよ! あーっ、楽しみ! 絶対に勝ちとんなきゃ!」




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