シャッターを切るときは

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
37 / 179
洞察⑴

しおりを挟む


矢代は微笑を浮かべながら秋に釘を刺した。

「期限は今年中。忘れてないよな? 最近成果が上がってないぞ。いつもながら成績も上がってないけど」
「それはだから、こういう事してくるからだろ! もう身体中痛くて死にそうだよ……。俺明日は学校休む」

半分はあわよくばという気持ちで、もう半分は八つ当たりのつもりでそう言った。
そんな秋の心中を知らずに、矢代は珍しく落ち込んだ様子になる。
「それは困る。俺はお前に一日会えないだけで退屈で頭がおかしくなりそうなんだ」
「本当? じゃあ俺が登校拒否すればアンタは発狂でもして学校を辞めんのかな」
「全く、物は言いようだな」
矢代は苦笑しているけど、実際のところ自分が好きなんて嘘に決まってる。
強いて言えば暇を潰せる玩具として、……言いたくないがていのいい性欲処理として気に入ってる感じなんだろう。

「先生ってゲイのカップルを見つけたいわけじゃないの?」
「あぁ。それを見つけてくるお前が好きなだけ」

矢代は切れ長の目をさらに細める。獲物を見つけたような鋭さを秘めた目で、狼狽える秋を捉えた。
「悪用してなくても盗撮は犯罪行為だろ。アンタは罰だとか何とか言ってたけど、現時点で俺は罪に罪を重ねてない?」
「はあ。そうだけど、今さらそんな矛盾を指摘されてもどうしたらいいか分からないな……」
矢代の無責任な言葉に、秋はキレる一歩手前まで来た気がした。

「何でアンタが分かんないんだよ! アンタの言う通りにすることが反省に繋がると思ってたのに!」
「冗談よせよ。盗撮が反省に繋がるわけないだろ。馬鹿なのか?」

矢代の言うことは正論だった。正論だけにムカつく。
何とか一発殴ってみたい。それでもし停学で済めば安いものだと思う。
「とにかく、今は深いことを考えるな。お前はただ忠実に、見つからないように気を配って盗撮を続ければいい。いいな?」
秋は押し黙ったまま一切の反応を示さなかったが、矢代は納得したように微笑んだ。

「じゃ、今日は責任とって家まで送ろう」
「はっ!? それはいいよ、大丈夫!」

思いがけない誘いに、秋は全力で断った。
だが矢代は華麗に流し、使い切ったゴムをちらつかせる。
「遠慮すんな。俺としてはお前が学校を休む方が困るんだ。十九時までここで寝てろ。もし先に帰ったら……わかるよな?」
それだけ言うと、矢代は部屋を出て行ってしまった。

「ちょっと……マジで嫌だ……」

秋は力なく言ったが、哀れなことにその呟きは誰にも届いていなかった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...