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洞察⑴
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しおりを挟む「拗ね……っ」
またまた気持ち悪いことを。
何で自分がどうでもいい奴のことで拗ねないとならないんだ。
怒りのあまり言葉の反撃は放棄し、矢代を突き飛ばす。次いでドアの鍵を開けようと試みたが、焦るばかりで中々開かない。また、彼に背を向けたことがいけなかった。
「うっわ!! 何すんだよ!」
矢代は後ろから秋を抱くように、彼のベルトに手をかけていた。
「いい加減わかるだろ? お前が大好きなセックスだよ」
耳元に吹きかけられた吐息にゾクゾクした。
こんなにも色気を含んだ男の低声は、テレビや音楽でも聞いたことがない。声で陥落しそうになるなんて、そんなことあっていいんだろうか。
それとも、彼だからこんな過剰に意識してしまうのか。
いや駄目だ、流されたら……!
一線を超えた先に待っているのは、壮絶な痛みと羞恥心。この前の一件で深く胸に刻み込んだ。
「やめろよ! もう絶対しない!」
秋はドアを背に振り返り、矢代の手を強く払った。
矢代は特に意に介さず、不思議そうに腕を組む。
「そうか? 授業中、というか一日中物欲しそうな眼で俺を見てただろ」
「この、妄想も大概に……あっ!」
否定するより先に、首元を矢代に吸いつかれ、秋は高い声を上げた。
「キスマークってのも悪くないな」
矢代は口を離してから、そんな事を呟いた。
「は!? つけたのか!?」
「気になるなら後で鏡で確認してみろ」
どこまでも勿体ぶった矢代の態度に、秋は愕然とする。
「……っとに最低だな、アンタ! 死ね!!」
「それはどーも。消えるまで迂闊に男を近付かせないことだな。無論、女も」
結局どこへ逃げても、行き着くところは同じだったのかもしれない。
「いいか。他の男に靡くことは絶対に許さない」
彼に捕まってしまった時から───きっと自分は、彼のモノ同然だったんだ。
「いや……だ……っ」
時間が流れる。秋は冷たい床の上で派手に仰け反った。
いくら人目を全く気にしない密室に居るとはいえ、今の姿はひどすぎる。
まさか、学校で全裸になる日が来るとは思わなかった。
俺は前世で大きな罪でも犯したのか?
そうでなきゃ、いくらなんでもひどすぎる仕打ちだ。
「すごく良い眺めだよ、秋。最高だな」
制服はもちろん下着も全てはぎとられ、両手はネクタイで縛られている。部屋自体は大して寒くない事が幸いだったが、それでもこの羞恥心は例えようもない。
それに何より、辛い理由は………。
「あぁ、また緩くなった。やっぱりお前の順応性はすごいな?」
「うあっ!?」
彼が動いたと同時に感じる痛み。
腰を掴まれ、後ろから突き上げられる、この繋がった感覚が辛かった。
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