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洞察⑴
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しおりを挟む「何で砂川と一緒にいたのか説明してもらわないことには帰せないな」
矢代は何故か、部屋の明かりを全て消した。秋の腕を掴み、強引に部屋の奥へと連れて行く。
「ちょっ、離せよ!」
さすがに怖くなって踏ん張りもしたが、簡単に隣の資料室に追いやられてしまった。初めて入ったが、高い棚が置かれているだけで窓もない。またひとつ冷たい層に落とされた気分だ。
予想通り最悪な尋問が始まる。
「さ、洗いざらい吐け」
「だから、俺は何も知らないんだって! たまたま砂川と会って、あいつがアンタに告白するって言うから……興味本位で見に来ただけだよ!」
「それが分からないな。砂川は何でそんな個人的な話をお前にしたんだ? クラスも違うし、仲が良いようにはとても思えないけど」
矢代の言う通り、秋が砂川とまともに話したのは今日が初めて。お互い帰宅部で、委員会や生徒会にも属してない。まず接点がない。
今回の出会いは、維の介入がなければ生まれることはなかったのだが。
維さんの話しちゃうと面倒な事になりそうだしなぁ…… 。
「お……俺はアンタの為にゲイを捜し回ってるんだから、多少ソッチの友達がいたっておかしくないだろ」
そういう事にしとこう。実際はゲイの友達なんて、元彼を省けばひとりもいないけど。
「お前はゲイの友達を作るぐらいなら一般人の友達を作った方がいいんじゃないか?」
「うるさいな! 余計なお世話だよっ」
思わぬ所を突かれて秋は言い返した。しかし相変わらず腕を封じられているのでマトモな抵抗はできない。
そのせいか、また矢代の気を逆撫でする様なことを口走ってしまう。
「俺は砂川を応援してたけどね! 付き合えば嫌でもアンタの本性を思い知るから、学校中にアンタの悪い噂が広まるんじゃないかって……!」
勢いに任せて気持ちと正反対のことを言ってしまった。本当は、矢代が砂川と付き合わなくてホッとしたのに。
どうしたって憎まれ口を叩いてしまう。これはもう治らないようだ。
「はは、それは残念だったな。彼は俺のタイプじゃなかったから」
矢代は可笑しそうに笑うと、資料室まで内側から鍵をかけた。
「積極的な年下はむしろ嫌いなんだよ。俺はお前みたいな、大人ぶってる子どもを揶揄うのか好きなんだ」
「い……意味分かんないから。俺大人ぶってないし……」
秋は後ずさるが、大した広さじゃないこの部屋では悪あがきにもならない。すぐに山積みになったダンボール箱にぶつかる。
「大体さ……アンタこそ他の生徒の前じゃ、馬鹿みたいにヘラヘラしてるんじゃん。俺といる時には見せたことないような笑顔を」
「それがどうした。まさか拗ねてるのか?」
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