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洞察⑴
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しおりを挟む「……っ」
砂川はいよいよ言葉に詰まり、視線を逸らした。
矢代はそんな彼を見てため息をつき、徐ろにパソコンの電源を落とす。
「罰ゲームでもそうじゃなくても、諦めてくれ。俺は既に心に決めてる人がいる。ごめんな」
「……はい。すいません」
砂川は気まずそうに答え、パソコン室から立ち去った。
ドアが開いた為、秋は隣の教室に移動して廊下を窺う。そこで暗い面持ちの砂川が出てきたことに気付いた。
どうしよ。何て声かけよう。
扉に張り付いていたこともあり、彼らの話の内容はうっすら聞こえていた。
正直バツが悪い。キッカケでしかないとはいえ、自分のせいであまりにも清々しくフラれてしまったのだから。
廊下へ出て、しどろもどろに声を掛ける。
「あ、あの砂川、ごめんな……俺がついてきたから」
フラれちゃって、と言いそうになったところを何とか踏み止まった。
「別に。萎えたからまた他を捜すよ。維さんに頼めばいくらでも紹介してくれるし」
彼は何の未練もなさそうに帰って行った。もう次の恋人を捜す元気があるなら大丈夫そうだ。
始めっから好きなのは顔だけだって言ってたもんな……。
だから、良かった。砂川には悪いけど、彼に矢代と付き合ってほしくなかったから……。
そう息をついた直後、誰かに勢いよく腕を引っ張られた。
「うわっ!?」
そのまま乱暴に引き寄せられたかと思えば、今度は突き飛ばされる。
一体何だと憤りを感じたが、目前に広がるパソコンの列を見て背筋が凍った。真後ろではドアの閉まる音と、……合ってるならば鍵をかけた音がした。
「色々おかしいとは思ったけど……やっぱりお前の差し金か。秋」
恐る恐る振り返ると、ドアの前には矢代が腕を組んで佇んでいた。昼間の姿は何処に行ったのやら、怖いぐらい無表情だ。
「……っ」
混乱しつつも、今の状況は非常にまずいということは分かる。パソコン室に引き込まれただけじゃなく、予想通り鍵までかけられていた。……逃げられない。
「俺がゲイだって、お前が砂川に教えたのか?」
矢代は低い声音で問いかけてきた。
何だか只事じゃない空気で、早く帰れば良かったと後悔する。
「し、知らない。マジで何も言ってないよ」
「俺がゲイだと確信してるから自信満々に告白してきたんだろ。少しでも不安に思ってるならキスなんてできるはずがない」
確かに。ノーマル相手にいきなりキスなんて、普通ならできないだろう。彼の言うことはもっともだったが、本当に何も話してない秋は頷くほかなかった。
「じゃあ……先生の仕草がゲイっぽかったとかさ。同じゲイとして、何かピンときたんじゃないの? とにかく俺は先生の秘密は何も話してないから」
「……」
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