シャッターを切るときは

七賀ごふん

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観察⑶

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砂川は確かに、イケメンに違いない。しかしそれを鼻に掛ける態度はどうかと思った。
少なくとも見た目と中身は比例しないようだ。そんなことを昔矢代にも言ったことがあるが、あの時は何て返されたか。全然思い出せない。否定はされなかった気がするけど。

「俺は結構だよ」
「そう? 知り合いにゲイいっぱいいるよ」
「俺はバイだから。……無理して男と付き合いたいとは思わない」
「ふーん……。あっ」

砂川はすっかり興味を失くし、退屈そうに呟いたが、物音に気付いて背中を向けた。パソコン室の手前で立ち止まり、ドアのガラスごしから中を窺う。
「いたいた」
秋も続いて覗くと、さっきの先生が言っていたように矢代が席に座っていた。
何かの資料の内容を入力しているようで、真剣な顔をしている。
「がっつり仕事中みたいだけど……行くの?」
秋が声を落として問いかけると、砂川も同じ音量で答えた。

「関係ないだろ。行ってくるから、風間は邪魔が来ないようにここで見張っててくれよ。……失礼しまーす!」

話の途中だというのに、砂川はノックをして勢いよく部屋へ入ってしまった。
まさか間髪入れずに動くとは思わなかった為、慌ててその場に屈み、中から見えないようにする。矢代からは見えずに済んだはずだが。

あいつ心の準備ってモンがねーのか……!!
よくよく考えて、そんなもの彼にはないのだと分かった。彼にとって恋人なんて飾りでしかない。飾りに嫌われたって怖くはないんだろう。

維さんもよりによって嫌な奴を紹介してくれたもんだ。まぁ矢代はその上を行く嫌な奴だけど。

バレない程度に身体を起こして、中の様子を見守る。中では楽しそうに話す二人の姿。
その光景にひどく疎外感を感じる自分がいた。

先生もなんだよ。誰にでも笑顔振りまいちゃって。
今は自分だけが知っているけど、あの二人は互いに腹黒い。生徒に手を出す変態教師と、見境なく男と付き合う尻軽生徒だ。それも異常者同士お似合いかもしれない。
……なんて皮肉に考えたけど、やっぱり変な気持ちになる。
いや、始めから変なことだらけだ。
誰が誰と結ばれようと、自分には関係ない。そのはずなのに。

あの二人が付き合ったら……嫌だな。

そんな風に思ってしまった。
自分の中に、彼を取られたくないという気持ちがあることに気付いた。
どうして。それに気付いてからは、意味が分からな過ぎて胸が苦しくなった。


何で俺は……いつも誰かの“好き”を見てるだけなんだろう。

外野で盗み見ることしかできない、最低な人間なんだ?




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