シャッターを切るときは

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
30 / 179
観察⑶

しおりを挟む


砂川は確かに、イケメンに違いない。しかしそれを鼻に掛ける態度はどうかと思った。
少なくとも見た目と中身は比例しないようだ。そんなことを昔矢代にも言ったことがあるが、あの時は何て返されたか。全然思い出せない。否定はされなかった気がするけど。

「俺は結構だよ」
「そう? 知り合いにゲイいっぱいいるよ」
「俺はバイだから。……無理して男と付き合いたいとは思わない」
「ふーん……。あっ」

砂川はすっかり興味を失くし、退屈そうに呟いたが、物音に気付いて背中を向けた。パソコン室の手前で立ち止まり、ドアのガラスごしから中を窺う。
「いたいた」
秋も続いて覗くと、さっきの先生が言っていたように矢代が席に座っていた。
何かの資料の内容を入力しているようで、真剣な顔をしている。
「がっつり仕事中みたいだけど……行くの?」
秋が声を落として問いかけると、砂川も同じ音量で答えた。

「関係ないだろ。行ってくるから、風間は邪魔が来ないようにここで見張っててくれよ。……失礼しまーす!」

話の途中だというのに、砂川はノックをして勢いよく部屋へ入ってしまった。
まさか間髪入れずに動くとは思わなかった為、慌ててその場に屈み、中から見えないようにする。矢代からは見えずに済んだはずだが。

あいつ心の準備ってモンがねーのか……!!
よくよく考えて、そんなもの彼にはないのだと分かった。彼にとって恋人なんて飾りでしかない。飾りに嫌われたって怖くはないんだろう。

維さんもよりによって嫌な奴を紹介してくれたもんだ。まぁ矢代はその上を行く嫌な奴だけど。

バレない程度に身体を起こして、中の様子を見守る。中では楽しそうに話す二人の姿。
その光景にひどく疎外感を感じる自分がいた。

先生もなんだよ。誰にでも笑顔振りまいちゃって。
今は自分だけが知っているけど、あの二人は互いに腹黒い。生徒に手を出す変態教師と、見境なく男と付き合う尻軽生徒だ。それも異常者同士お似合いかもしれない。
……なんて皮肉に考えたけど、やっぱり変な気持ちになる。
いや、始めから変なことだらけだ。
誰が誰と結ばれようと、自分には関係ない。そのはずなのに。

あの二人が付き合ったら……嫌だな。

そんな風に思ってしまった。
自分の中に、彼を取られたくないという気持ちがあることに気付いた。
どうして。それに気付いてからは、意味が分からな過ぎて胸が苦しくなった。


何で俺は……いつも誰かの“好き”を見てるだけなんだろう。

外野で盗み見ることしかできない、最低な人間なんだ?




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

嫁さんのいる俺はハイスペ男とヤレるジムに通うけど恋愛対象は女です

ルシーアンナ
BL
会員制ハッテンバ スポーツジムでハイスペ攻め漁りする既婚受けの話。 DD×リーマン リーマン×リーマン

父のチンポが気になって仕方ない息子の夜這い!

ミクリ21
BL
父に夜這いする息子の話。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...