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観察⑵
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しおりを挟むその日の放課後、秋は矢代を教室に呼んで、例の写真を見せた。
「ほら、これは間違いなく“当たり”だろ?」
スマホを渡し自信満々で腕を組む。ただし、今回はいつもと違う。
普段は写真を見せても矢代は無表情を貫くのに、この時ばかりは苦い顔を見せた。
「先生? どうかした?」
「いや……確かに、間違いないだろうな。おつかれ」
何だか釈然としない。秋は矢代の隣へ寄り添った。
「何だよ。この二人知ってんの?」
「逆に、お前は知らないのか?」
「知らないけど」
矢代はスマホを秋に返して、呆れ顔で教卓に手をついた。
「生徒会長の須佐と、副会長の苅谷。二人とも三年だけど、集会でよく前に出て喋ってるよ」
「え、マジ? 生徒会?」
だから何か見覚えのある顔だったのか。興味本位で覗きまくったけど、バレなくて本当に良かった。
秋は内心ホッとしながらスマホを仕舞う。
「まさか二人が付き合ってたとはね。驚きだ」
矢代は口で言うほど驚いてなさそうだ。最初の反応以外は顔も声も変わらない。
そもそも二人の事を知らない秋には意外性が伝わらなかった、という理由もある。
しかし、カウントしてもう四組目。この調子なら今年中に二桁見つけられるんじゃないだろうか。秋は気が軽くなる反面、目の前で薄く笑う矢代が恐ろしかった。
彼はどうして、自分にこんな事をさせるのか。付き合ってる二人を見つけて、納得するだけ。見つけたカップルに興味津々な素振りも見せない。……何が目的かわからない。
いつも整った笑顔を浮かべるだけだ。けどその表情こそ、温情とは掛け離れた色を纏っている。背筋に凍るものを感じていた。
「それにしても、秋。今回はシてる最中にも関わらずよく耐えたな。順応性高いじゃないか」
「えっ。……まぁね!」
思いがけない部分を突かれ、慌てて笑顔をつくる。実は必要以上に見ようとしてた……なんて、口が裂けても言えないと思った。
「先生はヤってるシーンとか見たくないわけ?」
「全く。それも生徒同士なんて正直見たくないわな」
「俺はしょっちゅう見させられてるってのに……」
てか、そうなんだ。
欲求不満とかって理由ではないらしい。なら尚さら目的が気になる。
矢代は熟考する秋の隣へ移動し、彼の唇に触れる。そして目を眇めた。
「ところで……お前、須佐と苅谷のセックスを見てまた興奮してたんじゃないだろうな」
「いっ……し、してない」
上手くかわしたと思ったのにまた蒸し返され、つい言い淀んでしまった。───それがまずかった。
「俺の目を見て言え」
矢代は秋を壁に押し当て、逃げられないよう両側に手をついた。
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