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観察⑵

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カーテンの僅かな隙間から部屋の中をうかがう。そこから見えたのは、前を歩いていたあの二人の男子生徒。

物陰に隠れてはいるが、床に伸びる影で分かる。……彼らは抱き合っていた。

思わぬところでカップルを見つけた。驚きよりも喜びの方が勝ってるんだから、自分も本当に落ちるとこまで落ちた気がする。
少し屈んで、良いアングルを探した。それにしても、ひとりはどこかで見た顔だ。頑張って記憶を辿ってみたが、どうしても思い出せない。諦めてポケットからスマホを取り出した。
息を殺して無音カメラのアプリを開く。彼らがキスしているシーンを逃がさずに。

「ん……っ」

シャッターを切った。

「はっ、あぁ……っ」

それが済んだらすぐに立ち去ればいい。悠長に構えていたらこっちも危険だ。
それなのに、秋はその場で彼らの様子を眺めていた。
男同士のセックス。以前、辻村と藤本を見た時のような生々しい光景。
あの時は衝撃が強くて混乱しただけ。……だが今回は好奇心に襲われていた。
他人のセックスを見てみたいという、最低最悪な欲求。エッチをどうやるのか知りたい。実践する予定なんてこれっぽっちもないけど、リアルを知ればAVがいかに作り物なのか分かる。事ある毎に矢代に馬鹿にされずに済む。

ドア開けたらさすがにバレるよな。そうだ、足元の扉ならバレないかも。

秋は床に屈み、小さい引き戸の扉を確認した。驚くことに鍵はかかっておらず、すんなり開いた為そこから覗き込む。
それも顔を床に張り付ける形になるので、かなりまずい格好だ。
やばい。俺どんどん変態になっていく……。

「苅谷、もっと足開いて」
「あっ……須佐、そんな広げんなよ……!」

無理やり足を開かされたらしく、苅谷という男子が上擦った声を上げた。
「だってこうしないと、どうなってるか分かんないし。後ろも濡らさないと」
うわ、そこまでやるか。
絶句した。 須佐という男子は、腰を突き出している苅谷の後ろの部分を舌で舐めている。
ここまで聞こえるはずがないのに、ピチャピチャという淫らな音が聞こえた気がする。
「んっんんっ!」
「指、入れるぞ」
須佐は、自身の指を彼の後ろに挿し込んでいく。苅谷は痛そうにしながらも、それを待ちわびていたかのように喘いだ。

「これから気持ちよくしてやるよ」

息苦しさを覚えた。
これから、もっと激しい展開が待ってる。怖い。見たい。見ちゃいけない……。
罪悪感と背徳感が肺を圧迫する。胸が高鳴る。
しかし唾を飲み込んだ瞬間、午後の授業を始めるチャイムが鳴り響いた。

やばっ!!

慌てて身体を起こし、足音を立てないよう慎重に立ち去った。
本気で危なかった……。
写真は撮れた。もう充分だ。今の出来事は全部忘れよう。





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