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観察⑵
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しおりを挟む「でもアキ、印象は頑張って変えなきゃな。二年からはクールと勘違いされて人気あるけど、お前一年には怖がられてるぞ」
怖がる?
小塚の言葉に驚きを隠せず、秋は前のめりになった。誰にも高圧的な態度なんてとったことないのに、心外としか言えない。
「何でだよ、俺優しいだろ。この前なんか汚くて誰も入れない中庭をひとりで掃除したんだぞ」
「それは遅刻の罰でしょうがなくだろ。もちろん俺とか、クラスの奴はちゃんとわかってるけどさ」
その言葉は衝撃的だった。優しいと思われるどころか怖がられてるなんて。
「アキ、どこ行くん?」
「売店行ってくる……」
覚束ない足取りで教室を出て行く秋を、小塚は不思議そうに見つめていた。
秋は一階まで降り、渡り廊下を進む。その胸中は依然として暗澹としていた。
でも……今思えば確かに、思い当たる節がある。
廊下を歩いていて、俺が避けるより先に皆すごい勢いで避けたり。話しかけてもどこか余所余所しかったり。まさかアレ全部そうなのか?
でも酷いのは遅刻ぐらいだ。確かにヤンキー達とAVを取り引きしてたことはあるけど。男なんだから当たり前じゃ……ないのか。
売店は意外と空いていた。
おにぎりと唐揚げを手にとって、レジの若い女性に尋ねてみる。
「あのー、突然ですけど俺ってどう見えます?」
「え? うーん……かっこ可愛いよ!」
「そっか! 良かった!」
「どうしたの、君」
彼女は可笑しそうに、しかし上品に笑った。
「何か俺、年下に怖がられてるらしいんですよ。別に怖がられるような行動なんてしてないのに。何がいけないんだろ」
「あはは、何だろうねぇ」
明るくノリのいい相手で、面白いほど話が弾んだ。
彼女はまだ二十代前半ぐらいで、歳は比較的近く見える。
そういえば女子と話すのも久しぶりだ。と思い、尚さら高揚する。勢いのまま男子校に入ってしまったが、本来自分は女子と騒ぐのも好きなのだ。
カウンターを挟み、女性は改めて頷いた。
「お世辞じゃなくて、君、かっこいいよ。でも遊び慣れてそうだから敬遠されちゃうんじゃないかな。女の子は純情な子が多いから」
「んー、それは確かに」
避けられてるのは女子ではなく同性なのだが、そこは黙っておこう。
それに、言われてみると基本遊び慣れた女子としか付き合ってこなかった。相談内容はだいぶ変わるが、やはりテンションの一致が大きい。
「お姉さん、話聞いてくれてありがと。ね、ところでココ男子校じゃん? そっちの……ゲイとかいると思う?」
「き、急に何言い出すの」
「まぁまぁ、引く気持ちはマジで分かるんだ。でももし何か情報あったら教えて。俺は風間秋」
「はは……君ホントに面白いね。ないと思うけど、分かったわ。私は白石維。よろしくね」
「維さん。うん、よろしく!」
自己紹介を終えて、秋は売店を後にした。
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