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観察⑴
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しおりを挟む「お前は見かけによらず……本当に一途だな」
矢代は秋に怒鳴られても動く素振りを見せなかった。代わりに、彼の目元に触れて涙をすくいとった。
「お前にそんなに好きになってもらえたら、相手は幸せなはずなのに……不思議だよな」
「……?」
意味が分からずに顔を上げた秋を、矢代は強く抱き締める。
「せんせ……っ?」
突然のことに戸惑う。だが矢代は抱く力を弱めない。ちょっと苦しいぐらいだ。
「本当に辻村のことが好きだったんだな」
そう言うと、彼は秋の頭を優しく撫でた。
「気付いてやれなくて悪かった」
「……」
全身の力が抜けていく。
知られないようにしてたんだから、気付かないのは当然だ。むしろ気付かれてたら困る。
それに今さら良い人ぶられたって……。
でも、責めることも考えることも怠くなって、……彼に身を委ねた。
「秋。遠慮しないでもっと泣いていいんだぞ」
「も……もう大丈夫です」
頬に伝った涙が乾いた頃、身体を離した。しかし下半身の違和感から重大な事に気付く。
ヤバい……俺まだ勃ったままだ!!
「秋?」
「あ、俺は大丈夫。先帰ってて」
「馬鹿、もうとっくに十九時を過ぎてるんだぞ。事務員も帰ってるだろうから、お前が帰るのを見届けないと」
「あー……じゃ、とりあえずトイレ寄ってから……」
苦し紛れにそう答えると、矢代はため息をついて、強引に秋の腰を引き寄せた。
「しょうがない奴だな。動けないって素直に言えばいいだろ?」
「いっ!?」
彼は秋のベルトを慣れた手つきで外すと、下着の中に手を差し込んだ。有り得ない展開に反応が遅れた。抵抗も虚しく、硬くなった性器を引き出される。
「や、見ないで……っ」
恥ずかしくて手で隠そうとしたが、それも矢代に阻まれてしまった。
「実は最初から気付いてたんだけどな。あえて触れずにいた」
「な、何で?」
「とりあえず……生徒が傷ついていたら癒す方を優先する」
矢代はチュッ、と秋の頬に音の鳴るキスをした。
「辻村のことは無理に忘れなくていい。でも俺といる時は……責任持って、あいつのことを忘れさせてやる」
何でそんなことを。
……鬼畜教師のくせに、負い目でも感じたんだろうか?
訊きたいけど訊けなかった。別に場の空気にのまれて、というわけじゃなかったんだけれど……ここで何を言ったところで、その言葉は夜空に吸い込まれる気がしたから。
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