上 下
5 / 171
観察⑴

しおりを挟む


それから一時間後。……恐ろしい事態が起きていた。
秋は誰もいない学校の廊下を猛ダッシュで走る。
程なくして目的地に着いた。自分のクラス、二年一組の教室の前へ。

「遅れてすいません!」

既に授業が始まっている中、勢い良くドアを開けた秋にクラスメイト全員が視線を向けた。
「おっ、秋。また寝坊か?」
「あはは……」
近くにいた友人達はけらけら笑ってる。
それはいいとして……怖いのは、その先。
確か一時間目の授業は……数学。
「また遅刻か、風間。そんなに補習したいのか?」
やっぱり。今日は厄日だ。

「すいません、矢代先生……」

黒板の前に立っていたのは、切れ長の瞳に、長身の若い青年。すぐ頭に浮かぶ形容詞を上げるなら、美形。まるでモデルの様なルックスをした彼が、秋の担任だ。
そして秋が最も苦手とする相手である。 

「いやっ……寝坊じゃないんです、家はいつも通りの時間に出て……電車で寝ちゃったんですけど」
「授業に遅れた以上、それも立派な寝坊だろう。罰として放課後、教室の掃除だ」 
「げっ……」
「ん? もっと広い所がいいのか?」
「とんでもない! 教室が良いです!」
秋は慌てて首を振り、自分の席についた。

「秋、どうせ遅くまでゲームしてたんだろー」
「違うって」

隣の席の友人に言い返し、鞄を雑に置く。
そして冷静に考える。元はと言えば、寝不足は自分のせいではない。後で抗議しよう。
秋は視線を前に移し、そつなく授業を進める彼を睨んだ。


────放課後。


「……だから、証拠も朝ちゃんと送ったでしょ? 俺はそれの為に今日まで情報収集とか頑張って、寝不足になったんです」
「ふぅん」
他生徒は皆帰った教室。
秋は箒を手にしながら、目の前に座る担任、矢代光希やしろみつきに捲し立てた。

「ふぅん。じゃなくて! 寝坊したのは仕方ないだろ? アンタがそうゆう……ゲイのカップルを見つけろって言うから、俺は毎日頑張って……!」

そう。朝のメールは、彼に送った。
先日入手した、ゲイのクラスメイトの証拠写真だ。 
「アンタの命令どおりやってるけど、ゲイのカップルなんてこれ以上見つかんないよ。大体見つけてどうすんの? 正直言ってくだらないね」
「あぁ、諦めるのは勝手だけど。その時は、お前の悪行が学校に知れ渡る覚悟をしとけよ」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集

夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。 現在公開中の作品(随時更新) 『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』 異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...