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観察⑴
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しおりを挟む一時間後。……恐ろしい事態が起きていた。
秋は誰もいない学校の廊下を猛ダッシュで走る。
程なくして目的地に着いた。自分のクラス、二年一組の教室の前へ。
「遅れてすいません!」
既に授業が始まっている中、勢い良くドアを開けた秋にクラスメイト全員が視線を向けた。
「おっ、秋。また寝坊か?」
「あはは……」
近くにいた友人達はけらけら笑ってる。
それはいいとして……怖いのは、その先。
確か一時間目の授業は……数学。
「また遅刻か、風間。そんなに補習したいのか?」
やっぱり。今日は厄日だ。
「すいません、矢代先生……」
黒板の前に立っていたのは、切れ長の瞳に、長身の若い青年。すぐ頭に浮かぶ形容詞を上げるなら、美形。まるでモデルの様なルックスをした彼が、秋の担任だ。
そして秋が最も苦手とする相手である。
「いやっ……寝坊じゃないんです、家はいつも通りの時間に出て……電車で寝ちゃったんですけど」
「授業に遅れた以上、それも立派な寝坊だろう。罰として放課後、教室の掃除だ」
「げっ……」
「ん? もっと広い所がいいのか?」
「とんでもない! 教室が良いです!」
秋は慌てて首を振り、自分の席についた。
「秋、どうせ遅くまでゲームしてたんだろー」
「違うって」
隣の席の友人に言い返し、鞄を雑に置く。
そして冷静に考える。元はと言えば、寝不足は自分のせいではない。後で抗議しよう。
秋は視線を前に移し、そつなく授業を進める彼を睨んだ。
────放課後。
「……だから、証拠も朝ちゃんと送ったでしょ? 俺はそれの為に今日まで情報収集とか頑張って、寝不足になったんです」
「ふぅん」
他生徒は皆帰った教室。
秋は箒を手にしながら、目の前に座る担任、矢代光希に捲し立てた。
「ふぅん。じゃなくて! 寝坊したのは仕方ないだろ? アンタがそうゆう……ゲイのカップルを見つけろって言うから、俺は毎日頑張って……!」
そう。朝のメールは、彼に送った。
先日入手した、ゲイのクラスメイトの証拠写真だ。
「アンタの命令どおりやってるけど、ゲイのカップルなんてこれ以上見つかんないよ。大体見つけてどうすんの? 正直言ってくだらないね」
「あぁ、諦めるのは勝手だけど。その時は、お前の悪行が学校に知れ渡る覚悟をしとけよ」
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