シャッターを切るときは

七賀ごふん

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観察⑴

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「あっ……ふ、ぁ……っ!!」

放課後、とある男子高の教室。

「んんっ……あ…っ!」
「いいね……すごく可愛いよ……」

本来なら学校で聞くことなどまずない、淫らな喘ぎ声が響いていた。
場所も構わずに抱き合っているのは、この教室の生徒で、二人の“少年”。
そして、そんな彼らを隠れて観察している一人の少年がそこにいた。

( もうちょっと……良いアングルで撮れないかな )

必死にスマホを動かす彼も、このクラスの生徒。
そして今、教卓の下に隠れて彼らを盗撮している。

今撮っている写真は別にネットに流すわけでも、彼らを脅すネタにするわけでもない。……ある人物に渡す為だ。
悪用されることはない。と、信じている。好きで盗撮しているわけじゃないし、誰かを貶めたいわけでもない。
「ん……ん……っ!」
「はは、キスぐらいで何興奮してんだよ」
二人は自分達の行為に夢中で、カメラを構える少年に気付く様子はまるでない。それは不幸中の幸いだ。感情を抑え、ひたすら彼らに焦点を当てた。
「……ふぅ。誰か来るかもしれないから、そろそろ行こうか」
「おう。続きはまたな」
彼らは最後に軽く抱き合ってから離れた。

「好きだよ。これからもずっと、お前だけだ」

舌を出したくなるぐらい甘ったるい愛の言葉。去っていく足音。夕陽で赤く染まる机。

出て行った。

ようやく独り。他に誰もいないことを確認し、少年は胸を撫でおろす。
喘ぎ声も愛の囁きも、彼には分からないし胸焼けがしそうだった。スマホの無音カメラを閉じて、教卓から出る。
とりあえず無事に盗撮できたことに達成感を覚えた。
それと同時に襲ってくる、罪悪感と虚無感。 
何もない天井を見上げて彼は呟いた。


「何やってんだろ、俺……」





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