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禁絶の武器
#17
しおりを挟むこれからどんな生き方をするか、決めるのは自分でも父でもない。
今生きている彼らだ。
それぞれがやりたいことをやって、行きたい場所へ行けばいい。
閉鎖的に生きる時代は終わった。それを言葉と行動で示していきたい。
「つまり、もっと自由にやって良い。ってことですか」
傍らでオッドが尋ねた。
「あぁ。端的に言えば、そういうこと。……長年築いた伝統を壊す可能性もあるから、反対する人も出ると思うけど」
生きる上で制限なんて必要ない。ランスタッドが生きづらければ、土地を移っても構わない。
そう続けると、皆顔を見合わせて、各々頷いていた。
「取り敢えず! ノーデンス様、まずはお体を治してくださいね」
「ありがとうございます。……申し訳ないんですが、これからは適度に休みも頂きたいと思います」
言っていいものか迷ったが、意を決して続ける。
「家族にもたくさん迷惑をかけてきてしまったので……」
「えぇえぇ、それはいいことです!」
「ノーデンス様が休めば俺達も休みやすいしなぁ」
「あぁ~はいはいその辺で……ノーデンス様、ちょっとお顔を見るつもりだったのに騒いですみません。そろそろ失礼しますね!」
空気が和んできた頃、オッドはノーデンスに集落へ帰る旨を告げた。
「仕事のことは忘れて、治療に専念してくださいね」
「わかった。頼むぞ、オッド」
「了解ですっ」
元気よく敬礼し、皆部屋から出ていった。マオナも軽く会釈し、扉を閉めた。
再びルネと二人きり。怖いぐらい静かな空間に逆戻りだ。
「皆がお見舞いに来てくれて良かったね」
「……うん」
「それだけ慕われてるってことだ」
ルネは心底誇らしそうに頬杖をついた。その様子に思わず笑いが零れる。
この信頼は自分ひとりで得たものじゃない。
彼のおかげでもある。それに気付いてないみたいだけど、あえて黙っておいた。
「……生きてるだけで幸せとか、本気で思っちゃうな」
愛しい人の手をとり、かつての孤独な自分に思いを馳せる。
もう独りじゃない。
あの頃とは何もかも違う。昔の自分から見たら嫉妬してしまうぐらい、今はたくさんの幸せを手にしている。
窓の外に広がる青空を眺めていた。
空が晴れてることがこんなにも嬉しいなんて、生まれて初めての経験だった。
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