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禁絶の武器
#5
しおりを挟む『ノース』
何を経験しても何を手に入れても、結局ここに行き着いてしまうのか。
亡者と父の声が混ざり合い、頭の中にとけていく。
『皆時間が経って、大切な人を手に入れて、忘れてしまったんだ。……自分達がされたことを』
幼い自分に向けて父が放った言葉。あれは一生忘れることはできない。
牙の抜けた獣として王家に飼い慣らされることを最後まで厭んだ父は、俺に復讐を引き継いだ。一族の呪いが込められたこの剣を託して。
ガラスを通したような世界を見ながら、過去の自分を垣間見る。
父が説いた復讐に拒否権はなかった。でも父が亡くなった今、それを敢行する必要はない。もう自分の為に、周りの人の為に生きていいんだ。
でも憎しみが消えない。俺の中に無数に根を張って行動を縛っていく。
それは全て、この剣によって─────。
虚しい。
剣に精神を乗っ取られていたことも、王族の復讐もみんな。
全て捨ててめちゃくちゃにしてやりたいけど、父さんの言った言葉が未だに胸の中で引っかかっているんだ。あの時訊きたかったけど、怖くて訊けなかったことがある。
惨めになるだけだからずっと押し殺していただけ……。でも本当はあの時から不満でいっぱいだったのかもしれない。
俺はあなたの復讐の道具じゃないんだよ、父さん。
鞘を拾い上げ、不快な音を立てながら刃をおさめる。
自分がそんなことをしてるとは思えなかった。確かに重さを感じ、冷たさを感じているけど、それは自分の意志じゃない。
再び歩き出した脚を止められない。まずい。
階段を上る度、死へのカウントダウンが始まる。
俺はずっと後ろで、知らない誰かの後ろ姿を見ていた。
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