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日暮れと出国
#11
しおりを挟むベッドが軋む音がうるさいけど、止まれない。
からからに渇いた喉を潤すように愛液を受け止める。
最初の挿入から何度もイッて、もう汗と涙、唾液でぐちゃぐちゃだ。獣同然の姿に舌を出したくなる。
でもルネはそんな自分をまるごと愛してくれる。汚れた場所も彼に触ってもらうと浄化された気になる。そんなわけないのに。
心の根底にこびり付いた汚れは一生落ちない。
また「ひとりで幸せになるのか」という声が頭の中で響き渡る。
あぁ……もちろん許されない。
「ノース。これ何だか分かる?」
すると突如律動を止め、ルネはサイドテーブルの引き出しを漁り出した。中から出てきたのは小さくて丸っこい器具二つと、長い筒状の器具。そこまで知識のない自分でもそれが何なのかすぐに分かった。
というか、この状況で出してくれば使い道はひとつしかない。……淫具だ。
「何それ。どこで手に入れたんだ?」
「いやぁ……ちょっと前に掘り出し物としてただで貰ったんだ。閉店セールってことで」
「は? そんなもん置いてるって、絶対いかがわしい店だろ! お前自分が有名人だってこと忘れてないか!?」
話を聞くと確かに子どももよく利用する小売店だったが、王族のルネにそんなものを渡すなんて。店主は相当疲れてたのかもしれない。
「お店には私と店主しかいなかったし、その店主のおじさんは渡航したからヨキートにはいないよ」
「海の向こうで言いふらされてたらどうする!? ヨキートの王子は大人の玩具を平然と持って帰ってましたよ~とか! ポケットに玩具を入れて街を闊歩する変態ですよ~とか!」
「ふう。事実だから仕方ない」
「仕方なくねーよ!! てか、んなもんお前の前に差し出す方も異常だ! 本来なら縄にかかってる!」
マイペースなルネにツッコミが止まらない。本当に、その店主もどういう神経してんだ。
王族はノーマルなセックスしか知らないだろうから刺激を与えようとしたとか? それもそれで重罪だ。純粋なルネに変なことを吹き込まれたくない。
「それに変な噂がたったらお前もヨキートに居られなくなるぞ。不用意に何でも受け取るな。近付いてくるのが善意を持つ人間ばからりじゃないんだ」
「分かってる。いや、分かったよ。これからは気をつける」
と、彼は眉を下げて陰具を口元に当てている。
「おいそれやめろ。絵面がやばいから渡せ」
「えー、せっかく貰ったんだよ? 一度は使わないと……というか、君に使いたくて貰ったんだし」
「なっ!」
確かにそうなるだろうが、そんなピンクの玩具で弄ばれるなんて冗談じゃない。
さっきまでシリアスな話をしていたんだし、百歩譲って今夜は健全なセックスをすべきだろう。健全なセックスが何なのか分からんけど。
「そんなもん使わなくたって満足してるし、気持ちいいよ」
「本当? 嬉しいな、ありがとう」
「ああ。……ってオイ、何してんだ!」
最悪なことに仰向けにさせられたまま、ルネが上からのしかかってきた。そして胸元に丸い器具を近付け、取れないよう付属のテープで取り付ける。
「ノース、とらないで。一生のお願い」
「一生のお願い雑すぎだろっ!」
またルネのボケに突っ込んでる隙に、乳首に丸いローターを付けられてしまった。非常に情けない姿に涙が出そうになる。何でこうなった。
「可愛い乳首が見えなくなっちゃったけど……こうして使うのかな」
ルネがローターに触れた後、カチッという音がした。その直後、ぶるぶると激しく鳴動する。
「うあっ! あっ、やだ……っ!」
ローターが乳首を擦る。最大まで硬くなったそこに当たるもんだから、少し痛いぐらいだった。
だけど慣れるもので、痛みは瘙痒感に変わり、それから麻痺していく。痺れてるけど今も誰かにつままれてるような錯覚に陥った。
「どう、ノース?」
「さい……あく……っ」
「そう? 気持ちよくないのかな。君胸も弱いのに」
ルネは戯れにローターを指で押し上げた。すると角度が変わり、乳首も上に引っ張られる。
「ひあっ! あっ、さわるな……あぁっ」
感じてることが確実にバレる喘ぎ方をしてしまった。一気に血の気がひいて視線を下に落とすと、脚の間に顔を埋め、彼は次の用意をしていた。
それはゼリーのように柔らかい感触をしてる、真ん中が空洞の筒。薄い桃色だが、ほとんど透明だ。持っているルネの指は透けている。
「ルネ……」
「大丈夫。力抜いて、ノース」
その筒が亀頭に触れると、ひやっとして身震いした。萎えそうな冷たさだ。
だけど開いた口からペニスを根元まで飲み込まれ、言葉を失った。
「……っ!!」
きつい。でも気持ちいい締め付け。
中央の穴に自分のペニスが全て入ったことが視認できる。本当に透明のゼリーに包まれたような見た目だ。でも勃起してるし、正直えぐい。
「ちゃんと入って良かった。これ、穴が小さいから私のだったら入らなかったかも」
悪気のないディスりを受け、尚さら怒りと羞恥心が込み上げてくる。力ずくで引っこ抜きたかったけど、ちょうど良い具合にはまって抜けそうにない。萎えないうちに無理に引っ張ったらかなり痛そうだ。
ちくしょう……。
自己嫌悪に苛まれてると、ゆるゆると筒ごと性器を扱かれた。ぶにぶにした嫌な感触が、まるで溺れてるように感じる。水の中で扱かれてるような……いや、それもちょっと違うか。
滑らないせいか、素手でされるよりも気持ちいい。でもここで気持ちいいとか言ったら絶対調子乗るよな。
また持ってこられても困るし、ここは我慢しなければ。
なるべく無心を努める。嫌がる素振りもしなかった。そのせいで扱くスピードがさらに速くなる。
「うっ……うぅ、んぅ、ん……っ」
いやらしい音が大きくなるにつれ、声ももれてしまう。力が抜け、脚は次第に開いていった。
「やっ!?」
その時また、胸のローターが激しく暴れだした。派手に仰け反ったとき、上から見下ろすルネと目が合う。
目の前で火花が散ったみたいに、強い衝撃に襲われる。
「あああぁぁっ!」
腰を引き寄せられ、閉じかけていた穴にルネの性器が潜り込む。休みなく快感を与えられ、もう理性を保っていられなかった。
「あっやだ、や、おかしくなるっ」
乳首と性器、そして身体の最奥を熱い肉棒で擦られる。こんなの初めてだ。とけてしまう。
「く……いいね。今までは手が足りなくて一度に可愛がってあげられなかったけど」
腰をしっかりホールドし、打ちつけながら前を握る。ルネが一番満足そうに頷いていた。
「これなら君の全部可愛がりながら繋がれる」
視界がぶれまくる。天井に向かって放り出されるつま先、ルネの厚い胸板、飛び散る汗、情けない状態で揺れるペニス。
全部見えてしまう。天国と地獄は同じ場所にあった。彼の顔が見えて嬉しいけど、繋がってぐちゃぐちゃになった部分も時折視界に入る。
体を折りたたまれ、全身を愛撫された。こういう時のルネの体力は凄まじい。
途中胸のローターがひとつ取れて床に転がり落ちてしまったけど、尖った乳首をルネは丹念に舐めた。
「はっ……も、母乳は出ないけど?」
「なは。それでも美味しいよ」
本当に変態みたいだと彼は笑った。でもその笑顔すら胸が高鳴る。
今は彼の全てに感じていた。
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