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先に奪ったのは
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しおりを挟むどうして同性を好きになるのか、という質問をしたことは覚えている。
彼はそのとき、性別は関係ないと答えた。
「問題は相手ではなく自分にある」。同性愛者は恋愛対象にすべき性別が分からない。そして自らの“性”が確立されてないから、悩むはずのない分岐路で立ち往生している。
女なのに、女を好きになった。
男なのに、男を好きになった。
それでいい。むしろそれが全てだ。何故?どうして?と考え出した瞬間に地獄が始まる。同性愛者という個々の特性を殺す。
かなり無茶苦茶というか、失礼なことを言ってるとも思えたが、黙って聞いていた。
「君の関心は同性愛者なら誰もが通る道だけど、そこをクリアしてもすぐに次の地獄が見えてくる」
「それ、終わりはないんですか」
「ないね。でも好きの意味が分かったら、君も俺と同じになれるよ」
朝間は延岡の額にキスをすると、つけていたシルバーリングを外した。そして彼の右手の薬指にそっとはめた。
「早く見つかるといいね。さ、もう遅いから早くお帰り」
「……っ」
こう言われると、どんなに粘っても意味が無い。
仕方なく頷いて別れの挨拶をする。
本当はまだ訊きたいことがあった。
どうしてそこまで崔本にこだわるのか。
彼のどこが良いのか────訊きたいけど、それを正直に訊いたら彼の逆鱗に触れる気がする。延岡は唇を強く噛んだまま、ひとり夜の住宅街へ戻っていった。
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