Dress Circle

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
102 / 157
先に奪ったのは

10

しおりを挟む



鼓動が速くなる。けど絶対に動揺を悟られてはいけない。できるかぎり無表情を装った。
「お仕事中? それとも休憩中ですか?」
「その中間かなー。今日の分はもう働いたんだよ。結果を出しとけば堂々と会社に戻れる。ところで一架は時間平気? 良かったら隣おいでよ。変なことはしないから」
会話の内容にデジャブを感じる。相変わらずマイペースな人だ。

彼は微笑を浮かべながら隣の座面をぽんぽんと叩いたが、首を横に振って、その場に佇んだ。前を通過して立ち去るのも微妙だったから、どうでもいい方向を眺めて鞄を背負い直した。
「最近ご無沙汰だったよね。たまってないの?
それか、他にちょうど良い人でも見つけたかな」
「ちょうど良いなんて……」
「あぁ、違うのか、ごめん。じゃあちょっと前まで一緒に寝てた……俺は、一架にとってどういう存在?」
彼は前傾し、膝の上に頬杖をついた。
試すような眼差しを受けるのは、たまらなく居心地が悪い。でもそれを素直に伝えるのも憚られる。

「朝間さんにはたくさんお世話になりました。こんな俺のことを気にかけてくれて、ありがとうございます」

お世辞半分、……本音が半分。
自分だって散々彼を利用したし、良くしてもらった。だから彼を責めるのはお門違いだ。謝罪と同じく、お礼は伝えないといけないと思った。
でもやっぱり、中途半端な言葉は彼には響かない。回答になってないことを見抜かれ、さっきより鋭い視線が突き刺さった。
俺が今言った台詞なんて聞こえなかったかのように、大袈裟にため息をつく。

「一架は自分の価値がまだ分かってないんだよね。大丈夫だよ。俺が必ず分からせてあげるから」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

短編集

田原摩耶
BL
地雷ない人向け

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...