86 / 157
陽のあたる場所
2
しおりを挟む土曜日、柊先輩と気まずい別れ方をしてしまった。
気が重いなんてレベルじゃなかったけど、ぐっすり眠ったら心は自然と落ち着き、また彼に会って謝ろう、という気持ちになった。
だけど翌週。今度は別の不安に苛まれた。
「え。柊先輩、学校休んでるんですか?」
「あぁ。珍しく熱出したって、もう三日も」
熱……。
週をまたいで、もう水曜日。避けてもないのに道理で会わないわけだ。
放課後に三年の廊下へ行って一架先輩に訊いてみると、彼は学校をずっと休んでいたらしい。
「柊先輩……大丈夫かな、この前は元気だったのに」
元気っていうか、週末は普通に遊んだんだ。ベンチで押し倒して、挙句の果てに厨二病みたいな台詞を吐き捨て、不穏な終わり方をしてしまったけど。
「……もしかして、お前あいつに何か言った?」
「えっ」
黙って考え込んでると、一架先輩は怪訝な表情でこちらを見ていた。仕方ないのでため息混じりに答える。
「いや。別に何も言ってないし、何もしてない。全部未遂で終わったもん」
「何の未遂だよ! まさかソッチの方向じゃないよな!?」
先輩は怒ってるけど、どっちの方向なのか分からないから怖くなかった。
それより柊先輩のことが気になる。
メールとかじゃなくて直接謝りたいんだけど、体調が悪いんじゃ仕方ないか……。
ため息混じりに視線を外すと、一架先輩は自身のスマホを取り出した。
「なぁ。そんなに心配なら、一緒に見舞いでも行く?」
「見舞……えっ!?」
諦めていた矢先、思わぬ提案をされて叫んでしまった。
「これから行くって、俺から連絡しとくからさ。あいつもお前が来たなら喜ぶんじゃねえの」
「い、いや……っ」
違う。多分逆効果だ。
むしろ今は会いたくないと思われてるかもしれない。体調が悪いなら尚さらだろう。
下手したら、この関係にもっと亀裂が入る可能性もある。
「俺はいい。気を遣わせるだけだし」
「え。もうお前と家に行くって送っちゃった」
「早っ!! 馬鹿じゃないの!?」
「誰が馬鹿だ!」
先輩は早くもメッセージを送ってしまったらしい。余計なお世話でしかないし、本当に困った人だ。
「もう、俺は行かないよ!」
「でも……早、柊からもう返事きだぞ。了解だと。お前も来るって思ってんのにそれは酷いんじゃないか?」
「酷いのは先輩だろ! 勝手にそんなん送って! 俺がいるのは絶対迷惑だよ……っ!」
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる