Dress Circle

七賀ごふん

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陽のあたる場所

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土曜日、柊先輩と気まずい別れ方をしてしまった。
気が重いなんてレベルじゃなかったけど、ぐっすり眠ったら心は自然と落ち着き、また彼に会って謝ろう、という気持ちになった。
だけど翌週。今度は別の不安に苛まれた。

「え。柊先輩、学校休んでるんですか?」
「あぁ。珍しく熱出したって、もう三日も」

熱……。
週をまたいで、もう水曜日。避けてもないのに道理で会わないわけだ。
放課後に三年の廊下へ行って一架先輩に訊いてみると、彼は学校をずっと休んでいたらしい。
「柊先輩……大丈夫かな、この前は元気だったのに」
元気っていうか、週末は普通に遊んだんだ。ベンチで押し倒して、挙句の果てに厨二病みたいな台詞を吐き捨て、不穏な終わり方をしてしまったけど。

「……もしかして、お前あいつに何か言った?」
「えっ」

黙って考え込んでると、一架先輩は怪訝な表情でこちらを見ていた。仕方ないのでため息混じりに答える。

「いや。別に何も言ってないし、何もしてない。全部未遂で終わったもん」
「何の未遂だよ! まさかソッチの方向じゃないよな!?」

先輩は怒ってるけど、どっちの方向なのか分からないから怖くなかった。
それより柊先輩のことが気になる。
メールとかじゃなくて直接謝りたいんだけど、体調が悪いんじゃ仕方ないか……。
ため息混じりに視線を外すと、一架先輩は自身のスマホを取り出した。

「なぁ。そんなに心配なら、一緒に見舞いでも行く?」
「見舞……えっ!?」

諦めていた矢先、思わぬ提案をされて叫んでしまった。
「これから行くって、俺から連絡しとくからさ。あいつもお前が来たなら喜ぶんじゃねえの」
「い、いや……っ」
違う。多分逆効果だ。
むしろ今は会いたくないと思われてるかもしれない。体調が悪いなら尚さらだろう。
下手したら、この関係にもっと亀裂が入る可能性もある。
「俺はいい。気を遣わせるだけだし」
「え。もうお前と家に行くって送っちゃった」
「早っ!! 馬鹿じゃないの!?」
「誰が馬鹿だ!」
先輩は早くもメッセージを送ってしまったらしい。余計なお世話でしかないし、本当に困った人だ。
「もう、俺は行かないよ!」
「でも……早、柊からもう返事きだぞ。了解だと。お前も来るって思ってんのにそれは酷いんじゃないか?」
「酷いのは先輩だろ! 勝手にそんなん送って! 俺がいるのは絶対迷惑だよ……っ!」



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