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暗がりの人
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しおりを挟む高いけど、くぐもったような金属音が反響している。
うるさい。このうるさい耳鳴りを止めてほしい。
街中は明るく賑わってるけど、楽しそうな笑い声が今はうるさくて仕方ない。
人混みの中を、足元を見ながら抜けていく。頭が痛かった。
苦しい。早く帰りたい……。
「あっ! すいませ……」
ちゃんと前を見てなかったせいで人とぶつかってしまった。相手は気に留めず通り過ぎたものの、衝撃で眼鏡を落とした。幸い、すぐに見つけたけど。
「……っ」
下へ屈んで眼鏡を手に取る。でもすぐに掛ける気になれなかった。
視界も悪い。伊達眼鏡だからむしろ良くなるはずなのに、変だな。
何でこんなに、世界が歪んで見えるんだろう。
「おい、何やってんだ?」
そのとき、頭上から聞き覚えのある声がした。まさかと思いつつ顔を上げる。
するとやっぱり、思った通りの人がいた。
「一架先輩……」
目の前には初めて見る私服の一架先輩が、俺を不思議そうに見下ろしていた。
こんな時じゃなければ嬉しい偶然なのに、今はウッとなる。再び俯くと、勢いよく手を引かれて立たされた。
「こんなとこにしゃがんでたら邪魔だろ。ちょっとこっち来い」
確かに道のど真ん中、先輩の言う通りだったから大人しく連れていかれた。ようやく邪魔にならなそうな駐車場の手前まで行き、一息つく。
「はぁ……」
「何だよ、そのため息。珍しく大人しいし」
俺の心情なんて知る由もない一架先輩は、むしろ興味ありげに顔を覗き込んできた。
「この前からだよな、変なの。何かあったのかよ」
「いーえ何も」
やっと気持ちが落ち着いてきて、いつものおふざけモードに戻る。でも眼鏡は握り潰しそうなほど力を込めて持っていた。
「仮に何かあったとしても、一架先輩には関係ない。視姦もやめてフツーの高校生に成り下がった先輩には」
「はああ? お前そればっかだな。何をそんな視姦にこだわってんだよ」
「視姦はどうでもいいんだよ。ガッカリしたんだ。先輩も結局、そこらへんの人と一緒だったんだってね!」
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