Dress Circle

七賀ごふん

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虚勢と

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教壇に戻らざるを得ない継美さんは舌打ちした。何てこんな態度悪い人間が教師になれるんだ。
心底不思議に思っていると、彼は俺にだけ聞こえる声で「放課後は残れよ」と呟いた。そして教卓の方へ向かい、いつものように出欠を取り始める。

複雑……いや、微妙な気持ちだった。
くっそー……だから何でアンタの言うことを聞かなきゃなんないんだよ!

放課後は速攻帰ってやる。
そう心に誓って一日を過ごした。なのに、教室を出る一歩手前で後ろから襟を掴まれる。
引き止めたのはやっぱり継美さんだ。

「こら。三分は付き合うって約束しただろ?」
「わ、分かった。じゃあどうぞ! 簡潔にお話ください」

首が締まって苦しいから、ちょっと強引に彼を突き飛ばした。襟をなおしながら、帰って行くクラスメイト達を横目に見る。
あ────俺も帰りたい。置いてかないでほしい。この性犯罪者と二人きりにしないでくれ。
悲愴感に浸かりながら考えてると、継美さんは深いため息をついた。

「俺に怒ってるみたいだな。それは一旦置いといて、最近元気ないだろ。……どうした?」

端正な顔が近付く。思わず見とれそうになるが、自分で自分の手をつねり、現実に戻った。

視姦はやめたけど、後輩と寝たけど、そんなのこの人には関係ないし。
俺に興味なんかないくせに、まるで心配してますみたいな顔をして……こういう時だけまともな大人のふりをするのはやめてほしい。
せっかく自分の中で処理しようとしてるのに、イライラが増す。

「……何でもありません。話ってそれだけですか。それなら帰ります」
「はぁ……。悪いけど、お前の変化はすぐに分かる。ここで三十人見てても、お前だけあからさまに顔色違うからな」

気付けば、教室にいるのは自分と彼の二人だけだった。最悪だ。一番避けたかったシチュエーションだ。
「また新しい隠し事でもできたか」
彼の指が頬に触れる。なぞるように、確かめるように。
虫唾が走った。またからかわれてる。俺を暇つぶしの玩具か何かだと思って。
前は「味方」だとか言ってくれたけど、今は全然信じられなかった。

「触るな!」

感情の暴発。けっこうな強さで彼の手を払ってしまった。自分でしておきながら驚いたけど、継美さんも目を見張って驚いている。
「あ……ご、ごめん……」
払った俺ですら痛かったから、彼はもっと痛かったはずだ。ちゃんと謝ろう……と思ったら、今度は倍の力で壁に押し付けられた。

そして抵抗する間もなく、唇を奪われた。




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