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虚勢と
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しおりを挟む「は。……視姦に興味がなくなった?」
「う、うん」
朝礼が始まる前に話を終わらせなくてはいけないから、意を決して打ち明けた。継美さんは案の定驚愕していたけど、すぐに笑顔に変わり、頭を撫でてきた。
「いや……びっくりしたけど、良かったよ。安心した。これでやっと、お前も普通の高校生だな」
「一応普通の高校生だけど……」
胸を撫で下ろしている彼に一言付け足す。
それにしても、継美さんはやっぱり教師として「良かった」って言ってるのかな。それ以上に深い意味はないのか……。
普通になったということは、普通の恋愛ができるかもしれない、ということなのに。
ほんの少し胸が締め付けられる。
「でも、何で急にやめたんだ? 視るだけじゃ物足りなくなった、とか言わないよな」
吐血しそうなほど図星だったけど、そこは元演者として作り笑いと嘘を織り交ぜた。
「まさか。単純に飽きたんだよ。冷静に考えたら、あれって本当何の生産性もないよね。あんなの見て時間潰すぐらいなら、ちょっとでも苦手な科目を勉強しようと思って」
「へぇー、そりゃまた偉いな。感心感心」
少々矢継ぎ早に喋ってしまったが、継美さんは簡単に騙されてくれた。それにホッとする反面、ちょっと複雑な気持ちになる。
今では本当に、他人のセックスを見ることに嫌悪感を抱くようになってしまった。自分だけの特等席で舞台を眺めることに言葉にできない喜びを感じていたのに、物足りなくなったんだ。
発端は間違いなく継美さんだ。彼の最初のセクハラにより、直に与えられる快感を知ってしまった。
もう自分が舞台に立たないと満足できない。
でも彼は俺のことをどう思ってるんだろう。未だにただの生徒としか思ってないなら、それはそれで何か腹立つ。
「ね……ねぇ。継美さんは恋人つくんないの」
「え? 今は別に考えてないな」
彼はさらっと答えた。それには「へぇ」としか返せない。っていうか。
それなら俺に手を出してきたのは何なんだ。
マジで、前に言ってた“お仕置き”の為……?
それなら確かに恋愛感情なんかなくても抱けるけど。それだと教師としても人としても終わってないか?
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