Dress Circle

七賀ごふん

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災難

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小さい頃から気付いていた。

自分は周りと違う。子どもらしさがない。
“らしさ”っていうのも上手く言い表せないけど、皆が喜ぶものに心が踊らない。流行りのゲームやアニメとか、テーマパークに行っても心にブレーキがかかってる。浮かれきれない。
主体的になりたいんじゃない。俺は常に外野で、中心で踊り狂ってる奴らを眺めることが好き。舞台も、ゲームも、セックスも。
おかしいけど、でもやめられない。むしろそんな不安を押し殺すように暴走してく自分が怖かった。
快感を追い求め、他人の快感に乗っかる俺は一体何なんだろう。

一体、誰とセックスしてるんだろう。

「……ん」

頭がガンガン鳴って、目が覚めた。知らないにおい、知らないベッドの上で。

おかしいな。図書室に居たはずだけど、保健室にいる。

「おっ、起きたか」
「うわ!」

隣を見ると、継美さんが椅子に座って首を傾げた。
今まで寝てたみたいだ。夢じゃなかったのは残念だけど……。
「何で俺……?」
上体を起こして頭を抱える。痛いのと、少し息苦しい。
不思議に思っていると、不意に額を触られた。
「お前、あの後ぐーぐー眠ったんだよ。でも今はちょっと熱もあるな……」
「え」
慌ててシーツをめくる。下はしっかりズボンを履き、ベルトも留められてあった。それには安心したが、
「さ、最悪……あんなカッコで……!」
「心配すんな、ちゃんと綺麗に拭いといてやったから」
「誰のせいだよ!」
彼の白々しさに驚いてツッコむも、鋭い目つきで睨まれて後ずさる。

「おっ、俺のせいです」

いや違う。絶対違うけど、悪に屈してしまう自分が憎い。

「……多分相当に感じてたんだと思うぞ。今まで抱いてきた中で、あんな気持ちよさそうな顔見んの初めてだったなぁ。お前に限っちゃオナってただけなのに」

近くに置いてある花瓶を見た時、これでこいつの頭を殴ったら気持ちいいんだろな、という考えが過ぎった。
「うん、写真撮っとけば良かった。もう最高のイキ顔だったよ。そりゃ意識も飛ぶわな」
「……」
シーツを握り締め、悔しさに唇を噛む。
「一架?」
気付いたら、何年ぶりかに涙を流していた。
「……帰る!」
ブレザーを持ってベッドから下りたけど、腕を掴まれて止められる。

「何だよ! もう鬱憤なら晴らしただろ、離せ」
「ま、まあまあ、落ち着けって。意地悪なこと言って悪かった。別に脅そうとか、馬鹿にしようとか思ってるわけじゃない」




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