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災難
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しおりを挟む昨日の今日ですごい人気だ。中央にいる青年を認識し、内心舌を出した。
ピチピチの男子高校生に囲まれ、さぞ幸せなことで。
人だかりを尻目に通り過ぎる。本当はこの空間にいたくないぐらいだけど、諦めて自席へ向かう。
それでも彼の甘い声がよく通る為、椅子に座っても話の内容が聞こえてきた。
「へー、梼原先生って軽音部の顧問になるんだ! じゃあさ、隣にあるからウチの部活も見に来てよ!」
「いいね。見に行くよ」
爽やかな(つくり)笑顔に優しい声音。やっぱり皆、継美さんに興味深々だ。
先生ねぇ……。
俺だけは違和感があって、納得できない。
朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴り、そこでようやく教室の中は生徒達の大移動になった。
「……?」
彼らと違いのんびり席で寛いでいたが、何故か目の前に影がかかった。
『先生』の皮を被った継美さんが立ち止まったからだ。
「次回の面談の案内配るから、これは必ず保護者の方に渡すように。はい、後ろの人に回して」
びっくりした。
目の前に来たから何事かと思って焦ったけど、一安心して彼から列分のプリントを受け取った。でも。
「あの……?」
受け取ったはいいものの、絶妙に力が強い。彼がプリントを持った左手を離さないことに気が付く。
オイ……。
何のつもりだ、さっさと渡せ。
周りが不審に思うだろ、と睨みをきかせたところで、彼は俺にしか聞こえない声で囁いた。
「ちなみに、こっちの手だから」
それだけ。
「はい、どんどん回してー」
俺が完全に硬直している間に、彼は隣に移って先頭にプリントを渡して行った。
あ……あいつ……!!
何のことか、瞬時に理解した。あの時の色気を帯びた目と声で、わざわざあの手を誇示してきたからだ。
昨日のトイレで、俺のアソコを弄ったのはこっちの“手”だって。
信じらんねぇ……!
昨日のあの出来事を思い出したらそれだけで火がついたみたいに熱くなり、恥ずかしくてたまらなくなった。
俺が無様にイッたことを嘲笑ってるに違いない。視姦趣味があるだけでなく、男に触られただけで簡単に射精する淫乱野郎だと。
そう考えただけで悔しくて、とても顔を上げられなかった。
絶対仕返ししてやる!
俺が味わった屈辱を百倍返しで、だ。
改めて彼への復讐心に火がつく。情けなんて一ミリも必要ないと分かったし、むしろ好都合だ。
「先生、一架がプリント回してくれません……」
真後ろの生徒が呟く。
一番最初に貰ったにも関わらず、最後の席にプリントが回ったのは一架の列が一番最後だった。
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