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災難
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しおりを挟む「ところで眼鏡いらないだろ、お前」
頭がボーッとしてる間に伊達メガネを外される。彼は俺の眼鏡をポケットに仕舞い、出口へすたすた向かっていった。
「ち、ちょっと! 返せ!」
「お前から話しかけてくれたら返すよ。それより早く綺麗にして、服ちゃんと着な。そのまま出てきたらさすがに庇えないぞ」
それだけ言い残すと、なんと本当に行ってしまった。
はああぁぁ!? 何だあいつ!!
教師として、じゃない。人としてやばい。
すぐにでも追いかけてぶっ飛ばしたかったけど、彼の言う通り今の姿は目も当てられなかった。誰かに見られたら自殺もんだ。
とりあえずティッシュで拭いて、いつの間にかメチャクチャに外されていたボタンを留めた。
「畜生……っ!」
こんな屈辱生まれて初めてだ。男がイく瞬間を見ることだけが生き甲斐の俺が、男の手でイかされた。
この時点で気が狂いそうだったけど、何とか心を殺して学校から帰った。
その日の夜、いつものホテルに来ていた。
「あぁ……っ!」
俺のファン同士で抱き合うところを、これ以上ない楽な立ち位置で眺めるため。
ところが、困ったことに全然心が晴れない。いつもなら興奮してくるはずなのだが、全くと言っていいほど何も感じない。
気持ちが沈んでる。光が射し込まない深い海の中にいるみたいに。
「ねぇ、もっと激しく突いてあげなよ」
「は、はいっ」
激しくいやらしいピストンを目の当たりにしても何とも思わない。むしろ恐ろしいことに冷めてきた。
これほど貪婪なパーティーの中心にいるのに……。
理由は明白。
この俺が、男にイかされたからだ。
「今日の一架は顔が怖いね。何かあった?」
いつから近くにいたのか分からないけど、俺の座るソファの肘掛けに朝間さんが座った。
「学校? 勉強……ではないよね。友達と喧嘩でもした?」
「友達じゃないけど、ちょっとムカつく奴がいてね。そいつもゲイ、なんだけど」
伏し目がちに頬杖をつく。詳しく話す気はなかったが、朝間さは想像以上に食いついてきた。
「へぇ、なら簡単じゃん。一架がここに招待してあげなよ」
「な、何で!」
「ここならやりたい放題でしょ? 好きな様に可愛がってあげて、一架は特等席で見物すればいい」
なるほど。でも、それは完全に犯罪じゃないか。ほとんどレイプだろう。
口を開けたものの上手く声にならず、また静かに閉じた。
「ま、一架のしたい様にしたらいいけどね」
そい言って微笑むと、彼は別のメンバーと部屋を出て行った。
複雑だ。……確かに、俺は人のセックスを見て喜ぶ正真正銘の変態だけど。
無理やり嫌がることをしてまで見たいわけじゃなくて。とにかく、ちょっと違うんだよな……。
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